父母ふたおや)” の例文
かくさんと云るをきゝ共に涙にくれたりしがやがてお文は父母ふたおやの前にたり兩手をつきたゞ今お兩方樣ふたかたさまのおはなしを承まはり候に父樣は何方いづかたへかお身を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
木綿縞の古布子ふるぬのこ垢づいて、髪は打かぶって居るが、うみ父母ふたおや縹緻きりょうも思われて、名に背かず磨かずも光るほどの美しさ。
漁師の娘 (新字新仮名) / 徳冨蘆花(著)
ねえさん、』とつかまつたときなぞ、かたれると、ころりん、ころりんとそれじつに……なんとも微妙びめうかすかる、……父母ふたおやをはじめ、るほどのものは、なんだらうなんだらう、とひ/\したが
神鑿 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
ほん父母ふたおやのありやなしや、更に聞かぬ。併し口にこそ言わぬが、其小さい心に一点の暗愁立ち去らぬ霧の如く淀んで居るのは、余所目よそめにも見られる。
漁師の娘 (新字新仮名) / 徳冨蘆花(著)
なさるべしといと忠實まめやかに申けるにぞ父母ふたおや其切そのせつなる心に感じ眼を屡叩しばたゝ然程迄さほどまで我が身を捨ても親をすくはんとは我が子ながらも見上たりかたじけなしとお文の脊中せなか
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
「——母の父母ふたおや、兄などが、こちらにお世話になっております。」
夫人利生記 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
文化のたくは此の島村しまむらにも及んで、粗末ながら小学校のもうけがある。お光八つにもなると路が遠いにつれもないからよせと父母ふたおやの拒むも聞かないで、往来ゆきもどり一里の路を日々弁当さげて通う。
漁師の娘 (新字新仮名) / 徳冨蘆花(著)