爆竹ばくちく)” の例文
くに正月十五日にさいの神のまつりといふは所謂いはゆる左義長さぎちやうなり。唐土もろこし爆竹ばくちくといふ唐人たうひと除夜ぢよやに、竹爆たけたふる千門のひゞきともしびもゆる万戸あきらかなりの句あれば、爆竹ばくちくは大晦日にする事なり。
「そのうちフローアショウがはじまる。眠気ざましに爆竹ばくちくをポンポンとやるから、そのとき……」
いやな感じ (新字新仮名) / 高見順(著)
湖水、教会堂、凄艶せいえん緋寒桜ひかんざくら爆竹ばくちくの音、むせるやうな高原の匂ひ、ゆき子は瞼に仏印の景観を浮べ、郷愁きやうしうにかられてゆくと、くつくつとせぐりあげるやうに涙を流してゐた。
浮雲 (新字旧仮名) / 林芙美子(著)
本島人の好物の一つである爆竹ばくちくが、昼夜の別なく門なみに打ち揚げられるのである。
少年 (新字旧仮名) / 神西清(著)
単調な雷の様で聞く耳に嬉しい籾摺もみずりのおと。凱旋の爆竹ばくちくを聞く様な麦うちの響。秋祭りの笛太鼓。月夜の若い者の歌。子供の喜ぶ飴屋あめやの笛。降るかと思うと忽ち止む時雨しぐれのさゝやき。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
それをこまかに割りつけて見ると、一分にと列車ぐらいずつ出入でいりをする訳になる。その各列車がきりの深い時には、何かの仕掛しかけで、停車場間際まぎわへ来ると、爆竹ばくちくのような音を立てて相図をする。
永日小品 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
大家たいけとなると二百三百とけたにして吊るすから山はイルミネーションのようで町中まちなかまで明るくなる。その提燈の下で一家眷属けんぞくが、うだねえ、十時頃まで酒を飲む、御馳走を食べる、爆竹ばくちくをやる。
ぐうたら道中記 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
そのくせ大通にあつては両側に櫛比しっぴせる商戸金色燦爛さんらんとして遠目には頗る立派なれど近くれば皆芝居の書割然かきわりぜんたる建物にて誠に安ツぽきものに候、支那は爆竹ばくちくの国にて冠婚葬祭何事にもこれを用ゐ
二葉亭四迷の一生 (新字新仮名) / 内田魯庵(著)
くに正月十五日にさいの神のまつりといふは所謂いはゆる左義長さぎちやうなり。唐土もろこし爆竹ばくちくといふ唐人たうひと除夜ぢよやに、竹爆たけたふる千門のひゞきともしびもゆる万戸あきらかなりの句あれば、爆竹ばくちくは大晦日にする事なり。
ごろ/\/\かみなりがやゝ遠のいたかと思うと、意地悪く舞い戻って、おびただしい爆竹ばくちくを一度に点火した様に、ぱち/\/\彼の頭上にくだけた。長大ちょうだいな革の鞭を彼を目がけて打下ろす音かとも受取られた。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)