浮薄ふはく)” の例文
しひの木はこのつつましさの為に我我の親しみを呼ぶのであらう。又この憂鬱な影の為に我我の浮薄ふはくを戒めるのであらう。
わが散文詩 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
都会とかいが、いたずらに華美かびであり、浮薄ふはくであることをらぬのでない。自分じぶんは、かつて都会とかいをあこがれはしなかった。けれど、立身りっしん機会きかいは、つかまなければならぬ。
空晴れて (新字新仮名) / 小川未明(著)
派手も明るさも、平家の人々がまとった浮薄ふはくとはちがう。繊弱せんじゃくではない。いたずらにぜいでもない。
源頼朝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
廿歳はたちといふもいまなるを、さかりすぎてははな甲斐かひなし、適當てきたう聟君むこぎみおむかへ申したきものと、一專心せんしんしうおもふほかなにもし、主人しゆじん大事だいじこゝろらべて世上せじやうひと浮薄ふはく浮佻ふてう
たま襻 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
でも、こんな場合に、すぐそんな話を受け入れるほど、彼女は浮薄ふはくではなかった。
第二の接吻 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
元来矢野は意志の力が強く天品てんぴん詩人的な男だから、浮薄ふはく名誉心めいよしんなどに動かされるたちではないけれど、み篶子すずこゆえには世俗的の名誉も求めねばならないような気がしているのも事実である。
廃める (新字新仮名) / 伊藤左千夫(著)