汲込くみこ)” の例文
眉山の家は本郷ほんごう春木町はるきちょうの下宿屋であった。学校から帰ると、素裸すっぱだかになって井戸の水を汲込くみこみつつ大きな声で女中を揶揄からかっていた。
「同役(といつも云う、さむらいはてか、仲間ちゅうげんの上りらしい。)は番でござりまして、唯今ただいま水瓶みずがめへ水を汲込くみこんでおりまするが。」
朱日記 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
つままつらん夕烏ゆふがらすこゑ二人ふたりとりぜんさいものふてるやら、あさがけに水瓶みづがめそこ掃除さうぢして、一日手桶てをけたせぬほどの汲込くみこみ、貴郎あなたひるだきで御座ございますとへば
われから (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
と呼びかけるほっペタの赤い太郎の顔や、その太郎が汲込くみこんで燃やし付けた孫風呂の煙が、山の斜面を切れ切れにい上って行く形なぞを、過去と現在と重ね合わせて頭の中に描き出すのであった。
木魂 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
「どういたしまして、ええ、水をって申しますと、平時いつものとおり裏長屋の婆さんが汲込くみこんで行ったと仰有おっしゃるんで、へい、もう根っから役に立ちません。」と膝をさすったり、天窓あたまを掻いたり。
三枚続 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)