わり)” の例文
わりゃ、はいはいで、用を済まいた顔色がんしょくで、人間並に桟敷裏を足ばかりで立って行くが、帰ったら番頭に何と言うて返事さらすんや。
南地心中 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
「おつう、そんな姿なりわりさむかねえか」といた。それから手拭てぬぐひしたからえるおつぎのあどけないかほ凝然ぢつた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
わり乞食ほいと盗賊ぬすっとか畜生か。よくもわれが餓鬼どもさ教唆しかけて他人ひとの畑こと踏み荒したな。ちのめしてくれずに。
カインの末裔 (新字新仮名) / 有島武郎(著)
われおれも一緒に来るんで、おれわれが背中へ乗って此の沼田へ来て長い馴染、おれが十二の時からひきなれて、斯うやって長い間一つ所に居れば畜生でも兄弟も同じ事、わりア達者な馬で
塩原多助一代記 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
「やいっ、何だわりゃあ?」傀儡師くぐつしだの、菰僧こもそうだのが、って来そうにしたので
親鸞 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
わりらが媾曳あいびきの邪魔べこく気だな、俺らがする事にわれが手だしはいんねえだ。首ねっこべひんぬかれんな」
カインの末裔 (新字新仮名) / 有島武郎(著)
わりゃ、天王寺境内に太鼓たたいていて、ちょこんと猿負背おんぶで、小屋へ帰りがけに、太夫どのに餅買うて、われも食いおった、行帰りから、その娘は馴染なじみじゃげな。
南地心中 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
「やい、わりゃア何者か、邪魔をしやアがると打殺うちころすぞ」
後の業平文治 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
わりゃ辞儀一つ知らねえ奴の、何条なんじょういうて俺らがには来くさらぬ。帳場さんのう知らしてくさずば、いつまでも知んようもねえだった。先ずもって小屋さ行ぐべし」
カインの末裔 (新字新仮名) / 有島武郎(著)
多一やい、皆への馳走ちそうに猿を舞わいて見せてくれ。恥辱はじではない。わりゃ、丁稚でっちから飛上って、今夜から、大阪の旦那の一にんむかしを忘れぬためという……取立てた主人の訓戒いましめと思え。
南地心中 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)