とこし)” の例文
巴紋ともえもんの旗は高くひるがえらず、春は来るとも李華はとこしえにそのつぼみを封じるようである。固有の文化は日に日に遠く、生れ故郷から消え去ってゆく。
民芸四十年 (新字新仮名) / 柳宗悦(著)
四大空に帰するか、魂魄こんぱく故郷に還るか、雄心滅せずしてとこしえに天地の間に磅礴ぼうはくたるか。自分はこの迷いに確答を与うべき科学を持っている。
妹にしろ妻にしろ、自分を世間に出しては取り柄のない人間と見做みなして、さう見做した上で、身内のよしみで、とこしへの愛情を寄せて呉れることを望んでゐた。
仮面 (旧字旧仮名) / 正宗白鳥(著)
とこしえに静粛に、そして厳格に、造化の大法を、寸分容赦なく行ってゆくように、この自然の王国から、定まれる寿命を召されて、根こそぎに、谷の中にたわいなく倒れている。
白峰山脈縦断記 (新字新仮名) / 小島烏水(著)
死んだ後までも彼らがとこしえに、彼女の胸になつかしい思い出の影像となってとどまっていると思えば、やっぱり、私は、捕捉ほそくすることの出来ないような、変な嫉妬しっとを感じずにはいられなかった。
狂乱 (新字新仮名) / 近松秋江(著)
上帝蛇をにくむの余りその四脚を去り、とこしえに地上をい行かしむと。
「神流れ今入る我はとこしえの命の水と流れゆくなり。」
生活と一枚の宗教 (新字新仮名) / 倉田百三(著)
恋はとこしえなるべきに
巴紋ともえもんの旗は高くひるがえらず、春は来るとも李華はとこしえにそのつぼみを封じるようである。固有の文化は日に日に遠く、生れ故郷から消え去ってゆく。
朝鮮の友に贈る書 (新字新仮名) / 柳宗悦(著)
未来に向って走る川との間にはさまって、池はとこしえに無言でいる、自分たち二人(自分は嚮導きょうどう兼荷担ぎの若い男を伴っている)だけが確に現在である、我らはのろわれているのではないかとおもう
梓川の上流 (新字新仮名) / 小島烏水(著)
信や美の世界には、憎悪がなく反逆がない。とこしえに吾々の間から争いの不幸を断とうとするなら、吾々は吾々の間を宗教や藝術によって結ばねばならぬ。
民芸四十年 (新字新仮名) / 柳宗悦(著)
とみに死んでけり、病める夫人は谷間へ下り立ち、糧にとて携えたる梨の実を土にうずめ、一念木となりて臨終の土に生いなむ、わがつまの御運ひらかずば、とこしえにうまを結ぶことなかるべしと
梓川の上流 (新字新仮名) / 小島烏水(著)
信や美の世界には、憎悪がなく反逆がない。とこしえに吾々の間から争いの不幸を断とうとするなら、吾々は吾々の間を宗教や藝術によって結ばねばならぬ。
朝鮮の友に贈る書 (新字新仮名) / 柳宗悦(著)
救いはくまなく渡るであろうか。衆生の済度はどうして果されるであろうか。もし知を有たずば神を信じ得ないなら、多くの衆生はとこしえの迷路に彷徨さまようであろう。
民芸四十年 (新字新仮名) / 柳宗悦(著)
彼はとこしえにやみから暗に葬られてゆく無銘の一職人に過ぎないのである。
思い出す職人 (新字新仮名) / 柳宗悦(著)