おや)” の例文
よろしい! 不用いらなけゃ三円も上げんばかりだ。泣くな、泣くな、可いじゃないか母上おっかさんの方からおやでもない子でも無いというのなら、いたしかたもないさ。無理も大概にしてもらわんとな」
酒中日記 (新字新仮名) / 国木田独歩(著)
此の廿五日にも参上あがつたのですよ、御近所の貧乏人の子女こども御招およびなすつて、クリスマスの御祝をなさいましてネ、——其れに余りお広くもない御家おうちに築地の女殺で八釜やかましかつた男のおやだの
火の柱 (新字旧仮名) / 木下尚江(著)
けれど、ぬぐえぬおびえに、ゆうべもこわい夢をみました。……ねえ、お母あさま。もし戦にでもなったら、足利ノ庄も安くはありません。私はめしいですし、おや一人子一人、誰もかまってなどくれますまい。
私本太平記:02 婆娑羅帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
おやの国筑紫この土我が踏むと帰るたちまち早やわらべなり
夢殿 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
「何だ」といきまく養母のおもて、ジロリ横目に花吉は見やりつ「ハイ、乞食のおやふところで、其時泣きじにに死んだなら、芸妓げいしやなどになりさがつて、此様こんな生耻いきはぢさらさなくとも済んだでせうにねエ」唇めて
火の柱 (新字旧仮名) / 木下尚江(著)