がれ)” の例文
向島むこうじまのうらがれさえ見にく人もないのに、秋の末の十二社、それはよし、ものずきとして差措さしおいても、小山にはまだ令室のないこと、並びに今も来る途中
政談十二社 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
僕が毎日の様にくのはリユクサンブル公園と、其処そこの美術館とだ。一えふをも着けない冬がれの、黒ずんだ幹の行儀よく並んだ橡樹マロニエの蔭を朝踏む気持は身がしまる様だ。
巴里より (新字旧仮名) / 与謝野寛与謝野晶子(著)
花薄はなすすきあまりまねけばうらがれて 翁
俳句への道 (新字新仮名) / 高浜虚子(著)
なげきぬ、あしはうらがれ
白羊宮 (旧字旧仮名) / 薄田泣菫薄田淳介(著)
うらがれの秋から、冬の時雨の夜へかけて、——迷児まいごの迷児の何とかやーい——と鐘をたたいて、魔にられたものを探す声を、毎晩のように聞いて、何とも早や首を縮めたものでござります
二人思わず、しかし言合わしたごとく、同時に塚の枯草の鳥冠をた。日影は枯芝の根を染めながら、目近き霧のうらがれを渡るのが、朦朧もうろうと、玉子なりの鶏を包んで、二羽に円光の幻を掛けた。
そこを——三光坂上の葭簀張よしずばりを出た——この老人はうらがれを摘んだかごをただ一人で手に提げつつ、曠野あらのの路を辿たどるがごとく、烏瓜のぽっちりと赤いのを、蝙蝠傘こうもりがさからめていて、青い鳶を目的めあて
白金之絵図 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)