村外むらはず)” の例文
深良屋敷というのは村外むらはずれの国道から二三町北へ曲り込んだ、小高い丘の上の雑木林に囲まれた小さな一軒家であった。
巡査辞職 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
むかし、ある片田舎かたいなか村外むらはずれに、八幡様はちまんさまのお宮がありまして、お宮のまわりは小さな森になっていました。
狸のお祭り (新字新仮名) / 豊島与志雄(著)
かような次第で血の穢を忌むという思想から、各村落には村外むらはずれの地に共同の産小屋さんごやを設けて、そこへ行ってお産をする習慣は、昔は各地にあった事と存じます。
毎日まいにちさうしてあるいてをんなりたがりきたがる女房等にようばうらあひだに、各自てんで口喧くちやかましい陰占かげうらなひたくましくされるともなく、ある村外むらはずれの青葉あをばなか太皷たいこおとうたこゑとがとほかすかにぼつつた
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
さいわいひっそりとした一構えに、人のはいもない様子を見届けて、麺麭パン葡萄酒ぶどうしゅを盗み出して、口腹の慾を充分たした上、村外むらはずれへ出ると、眠くなって、うとうとしている所へ、村の女が通りかかる。
文芸の哲学的基礎 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
電車会社の大きなベースボールグラウンドが、村外むらはずれの松原を切り開いて出来た。その開場式を兼ねた第一回の野球試合の入場券が村中に配られた。
いなか、の、じけん (新字新仮名) / 夢野久作(著)