未見みけん)” の例文
義雄は、かの未見みけんの敵であつた山の客がした如く、敷島の部屋を宿やど見た樣にして、晝間は氷峰や、勇や、入院中の森本などをまはり歩いた。
泡鳴五部作:04 断橋 (旧字旧仮名) / 岩野泡鳴(著)
薬法もまた仏家ぶっけでいう“未見みけん真実”なら、色坊主が女体開眼の方便として用いるのもまた、彼らには、いわゆる女人済度にょにんさいどの慈悲のひとつか。
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
結びて懷姙くわいにんなしゝ一子なるが民間みんかんに成長して後未見みけん父君ちゝぎみ將軍と成しかば證據ものたづさへて訴へ出たるなればよしお世繼よつぎとせざるまでも登用とりあげてもて生涯しやうがい
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
などゝ面々めん/\は、創立さうりつさいにはこと/″\未見みけんの人であつたのもまた一奇いつきふべきであります
硯友社の沿革 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
心細こゝろぼそことには、鹽尻しほじりでも、一人ひとりおなしつ乘込のりこまなかつた。……宿しゆくは、八重垣姫やへがきひめと、隨筆ずゐひつで、餘所よそながら、未見みけん知己ちき初對面しよたいめん從姉妹いとこと、伯父をぢさんぐらゐにおもつてたのに。………
魔法罎 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)