服装いでたち)” の例文
旧字:服裝
同行を求められても嫌な顔も見せず、一度家の中へ入って帽子を手にして出てくると、紋付はかま服装いでたちでそのまま自動車に乗り込んだ。
五階の窓:03 合作の三 (新字新仮名) / 森下雨村(著)
渠は紳士というべき服装いでたちにはあらざるなり。されどもその相貌そうぼうとその髭とは、多くべからざる紳士の風采ふうさいを備えたり。
義血侠血 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
似而非えせ賢者何程なにほどのことやあらんと、蓬頭突鬢ほうとうとつびん垂冠すいかん短後たんこうの衣という服装いでたちで、左手に雄雞おんどり、右手に牡豚おすぶたを引提げ、いきおいもうに、孔丘が家を指して出掛でかける。
弟子 (新字新仮名) / 中島敦(著)
羽織袴の服装いでたちの紳士もそれと同じ数程居て、フロツクコートを着た人も混つて、口々に汽車がおくれたから、汽車が定刻より遅く着くさうだからと云つて居る。
御門主 (新字旧仮名) / 与謝野晶子(著)
けれどもまた尋ね出そうとするその人が、霜降しもふり外套がいとうに黒の中折なかおれという服装いでたちで電車を降りるときまって見れば、そこにまだ一縷いちるの望があるようにも思われる。
彼岸過迄 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
徳川幕府が仏蘭西フランスの士官を招聘しょうへいして練習させた歩兵の服装——陣笠じんがさ筒袖つつそで打割羽織ぶっさきばおり、それに昔のままの大小をさした服装いでたちは、純粋の洋服となった今日の軍服よりも
銀座 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
陣笠じんがさ割羽織に立附たっつけを着用し、帯刀までして、まだ総督を案内したままの服装いでたちも解かずにいる親しい友人を家に迎え入れることは、なんとはなしに半蔵をほほえませた。
夜明け前:03 第二部上 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
やうやくすがたがわかるくらゐの明るさだつたが、現れる人像の一つ一つがきまつたやうに同じ服装いでたちの女ばかりで、丁度ちやんちやんこのやうな厚い感じの仕事着にもんぺをはき
逃げたい心 (新字旧仮名) / 坂口安吾(著)
平馬から、いぶかしい服装いでたちで、のっそりと後に立った、闇太郎へと、目を走らせる。
雪之丞変化 (新字新仮名) / 三上於菟吉(著)
服装いでたちは、将棊しょうぎこまを大形に散らしたる紺縮みの浴衣ゆかたに、唐繻子とうじゅす繻珍しゅちんの昼夜帯をばゆるく引っ掛けに結びて、空色縮緬ちりめん蹴出けだしを微露ほのめかし、素足に吾妻下駄あずまげた
義血侠血 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
本陣の玄関先にある式台のところは、これらの割羽織に帯刀というものものしい服装いでたちの人たちで混雑した。陣笠じんがさを脱ぎ、立附たっつけの紐をほどいて、道中のほこりをはたくものがある。
夜明け前:03 第二部上 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)