明烏あけがらす)” の例文
投げ入れし一しなれにも笑つて告げざりしが好みの明烏あけがらすさらりと唄はせて、又御贔負ごひいきをの嬌音きやうおんこれたやすくは買ひがたし
たけくらべ (新字旧仮名) / 樋口一葉(著)
横になると新内しんない明烏あけがらすをところまんだらつまんで鼻唄はなうたにしているうちに、グウグウと寝込んでしまいました。
大菩薩峠:13 如法闇夜の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
役らしい役をしたのは、十四歳の時の「明烏あけがらす」のゆかりで、余りにも役が平凡すぎるが——これには声がはりか何か事情があつたのだらう。この時、田之助が浦里で出てゐた。
役者の一生 (新字旧仮名) / 折口信夫(著)
この興行は、歌舞伎座の狂言が「おこよ源之丞」と「二十四孝」と「明烏あけがらす」で、一月十二日正午十二時に開場し、明治座は「伊達騒動だてそうどう」の通し狂言で、同日午前十時に開場した。
明治劇談 ランプの下にて (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
花里花魁は何うした縁でございますか、あの明烏あけがらすの文句の通りの人に逢うた初手から可愛さが身にしみ/″\と惚れぬいて解けて悔しきびんの髪などと、申すような逆上のぼせ方でげす。
投銭にはちゃちゃらかちゃんなんて古風な流行唄はやりうたをやってますが、い声で、ぞッとするような明烏あけがらすをやりますんでね。わっしあ例のへべれけで、素見ひやかし数の子か何か、鼻唄で、銭のねえふてくされ。
三枚続 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
明烏あけがらすかさね身売りの段を語った。
(新字新仮名) / 太宰治(著)
新内の「明烏あけがらす」だった。
寄席 (新字新仮名) / 正岡容(著)
伯母をばさんあの太夫たゆうさんんでませうとて、はたはたけよつてたもとにすがり、れし一しなれにもわらつてげざりしがこのみの明烏あけがらすさらりとうたはせて
たけくらべ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)