方舟はこぶね)” の例文
「どうして見られるもんですかね? あの家はノアの方舟はこぶねですからな」自席から耳を傾けていた事務官が、こう口をさしはさんだ。
いわゆる諾威ノア方舟はこぶねを造り、その族人および禽獣の属おのおの一ごうを乗せて洪水をさけしというがごときこれなり。
教門論疑問 (新字新仮名) / 柏原孝章(著)
そこには私の幼いときからの手遊びの玩具が入っていて、ノアの方舟はこぶねの乗合のように大混雑を極めていた。
桜林 (新字新仮名) / 小山清(著)
わだの源と天の戸閉塞とぢふさがりて天よりの雨やみぬ。ここに於て水次第に地より退き百五十日を経てのち水減り、方舟はこぶねは七月に至り其月の十七日にアララテの山に止りぬ。
可愛い山 (新字新仮名) / 石川欣一(著)
「そんなことはどうだっていいが、君は『ノア』ってのを知ってるかい。ノアの方舟はこぶね、ってやつ」
ノア (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
あツと思ツて肇さんは目を見張ツた。碎けた浪の白漚しらあわは、銀の齒車を卷いて、見るまに馬の脚を噛み、車輪の半分まで沒した。小さいノアの方舟はこぶねが三つ出來る。浪が退いた。
漂泊 (旧字旧仮名) / 石川啄木(著)
というのは、私の信ずるところでは、ノアの方舟はこぶね此方これほど甘やかされた船員は決してなかったのだから。ちょっとした口実があっても、強い水割りラムグロッグが振舞われたりした。
方舟はこぶねはその土地へ、彼らとともにそしてわれわれの力によってはいってゆくだろう。
ローズ・ブノワさんは、その楽園らくえんにある花の名前なまえ全部ぜんぶと、その方舟はこぶねっていたけものの名前を全部っています。それから、ジャンセエニュ先生せんせいと同じ数だけのお伽話とぎばなしを知っています。
母の話 (新字新仮名) / アナトール・フランス(著)
砕けた浪の白漚しらあわは、銀の歯車を巻いて、見るまに馬の脚を噛み、車輪の半分なかばまでかくした。小さいノアの方舟はこぶねが三つ出来る。浪が退いた。馬は平気で濡れた砂の上を進んで来る。
漂泊 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
反対はんたいに、聖書せいしょのお話は大変たいへんよく知っています。ジャンセエニュ先生せんせい生徒せいとのうちでも、地上ちじょう楽園らくえんとノアの方舟はこぶねことをローズ・ブノワさんのように上手じょうずにお話しできる生徒せいとは一人もいません。
母の話 (新字新仮名) / アナトール・フランス(著)
そんな風に話した。鳴尾君は話が巧かった。多く聖書の話をした。ノアの方舟はこぶねの話、イエスの誕生の日のうまや小屋の話、エマオの途上の話など記憶に残っている。ノアの方舟の話は傑作だった。
西隣塾記 (新字新仮名) / 小山清(著)