揚々ようよう)” の例文
桃太郎は意気揚々ようようと鬼が島征伐ののぼった。すると大きい野良犬のらいぬが一匹、えた眼を光らせながら、こう桃太郎へ声をかけた。
桃太郎 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
八五郎は飛んで行きましたが、得意の耳と鼻を働かせて、二た刻ばかりつと、揚々ようようと帰って来ました。後ろにはお北がいております。
歓迎とはいかなる者ぞと不審気に見える顔もたまには見える。またある者は自己の歓迎旗の下に立って揚々ようようおくれて出る同輩をながめている。
趣味の遺伝 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
それにつづいて、見かけは唐物問屋ほど派手ではないが、鉄物——古鉄もあつかう問屋がめざましく、揚々ようようとしていた。
ゾパルは新知識の所有者を以てみずから任じ、新説の提唱をなすが如く思いて意気揚々ようようとして舌をふるう、これに対してヨブは右の如く答えるのである。
ヨブ記講演 (新字新仮名) / 内村鑑三(著)
その目は揚々ようようと輝き、その瑞々みずみずしい頬には笑いが浮かんでいた。一人はくり色の髪で、一人は褐色かっしょくの髪をしていた。その無邪気な顔は驚喜すべきものだった。
彼は揚々ようようと烏啼の館へ立ち戻った。秘仏は彼の肩から下ろされ、地下の特別倉庫へ安置せられた。
そして彼は、つては無様ぶざまに辷り落ちたあの梯子段はしごだんを、意気揚々ようようくだって行くのであった。
灰神楽 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
そこで先生はおりおり一竿かんを肩にして河へつりにゆく、一尾のふなもつれないときには町で魚を買ってそのあぎとをはりにつらぬき揚々ようようとして肩に荷うて帰る、ときにはあじ、ときにはいわし
ああ玉杯に花うけて (新字新仮名) / 佐藤紅緑(著)
徐晃は使命を果たして、意気揚々ようようと、このところへさしかかって来た。
三国志:06 孔明の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
眼鏡のふちから、斜めに宗近君を見ると、相変らず、紙屑籠かみくずかごって、揚々ようようと正面を向いて歩いている。
虞美人草 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
先生は勝誇って揚々ようようと、片っぽの手に鍋をさげ、片っぽの手で老人の肩をひっつかんで引摺ひきずった。大得意で先生は大通りを人形町の交番へと、老人を引渡しにいった。
わしのじゅくの生徒はみんな不幸なやつばかりだ、同じ土地に生まれ同じ年ごろでありながら、ただ、金のためにこうは意気揚々ようようとしおつ悄然しょうぜんとする、こんな不公平な話はないのだ、いいか安場、そこでだ
ああ玉杯に花うけて (新字新仮名) / 佐藤紅緑(著)