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捨子
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すてご
委く承知なされぬ故なり
兎角に知ぬ事は疑心の發るもの然ば
拙僧が
詳細認めて御目に掛んと筆を
取出し佐州相川郡尾島村淨覺院門前に
捨子に成せられしを
「もう
餘程久しい
事でございます。あれは
豐干さんが
松林の
中から
拾つて
歸られた
捨子でございます。」
戸籍面の父は
痴で、母は
莫連者、実父は父の
義弟で実は此村の
櫟林で
拾われた
捨子である。
ば世話致し
居や
且此度の義に付心當りも
是有ば申立よと申されし時六右衞門
愼んで
頭を上げ私事は生國三州藤川宿に御座候藤川
近在に
罷り
在候兄の久右衞門儀先年
捨子を
生奉つり
産後肥立兼相果られ其後は
老母の手にて
御養育申せしが右の老母
病死の
砌り若君をば同國
相川郡尾島村
淨覺院と申す寺の門前に御
證據の品を
相添捨子として有しを