ぬい)” の例文
旧字:
若者等は刀をぬい追蒐おっかける、手塚は一生懸命に逃げたけれども逃切れずに、寒い時だが日比谷そとの濠の中へ飛込んでようやく助かった事もある。
福翁自伝:02 福翁自伝 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
... 葛入餅くずいりもちと申して葛の粉少々と糯米もちごめと一所に蒸して充分にぬいたのです」客「道理で絹漉餅きぬこしもちともいうべき位です。あんまり美味しいので残らず平らげました」
食道楽:春の巻 (新字新仮名) / 村井弦斎(著)
その実案外意久地いくじのない男かしらと思う場合もあるが、それは一文なしになって困りぬいた時などで、そう思うとなさけなくなるからなるべくそれは自分で打消していたのである。
竹の木戸 (新字新仮名) / 国木田独歩(著)
御介抱もうしたる甲斐かいありて今日の御床上とこあげ芽出度めでたい芽出度めでたけれど又もや此儘このまま御立おたちかと先刻さっきも台所で思い屈して居たるに、吉兵衛様御内儀が、珠運様との縁たくば其人様の髪一筋知れぬようにぬい
風流仏 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
たわむれに居合をぬいて、随分ずいぶん好きであったけれども、世の中に武芸の話が流行すると同時に、居合がたなはすっかり奥に仕舞しまい込んで
福翁自伝:02 福翁自伝 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
それを持って行って型からぬいて食べる時に皆さんがナイフでお切なさい、これが先ず七十銭ほどかかります。その次はパン代りの手軽なビスケットに致しましょう。
食道楽:秋の巻 (新字新仮名) / 村井弦斎(著)
渋をぬいた柿の腐敗くさりかかったようなもので、とても近よることは出来ない。
酒中日記 (新字新仮名) / 国木田独歩(著)
江戸の大城たいじょう炎上のとき幼君を守護して紅葉山もみじやま立退たちのき、周囲に枯草の繁りたるを見て非常の最中不用心ぶようじんなりとて、みずから腰の一刀をぬいてその草を切払きりはら
福翁自伝:02 福翁自伝 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)