折釘をれくぎ)” の例文
逃出にげだすとときに、わがへの出入でいりにも、硝子がらす瀬戸せとものの缺片かけら折釘をれくぎ怪我けがをしない注意ちういであつた。
露宿 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
女中は身体からだ折釘をれくぎのやうにしてお辞儀をしたが、その儘主人のへやを飛び出して、直ぐに支度に懸つた。
『暑いなア。』と小池はインバネスをいだついでに、竪絽たてろ濃鼠こいねずみ薄羽織うすばおりをもてると、お光は立つてインバネスを柱の折釘をれくぎにかけ、羽織は袖疊そでだたみにして床の間にせた。
東光院 (旧字旧仮名) / 上司小剣(著)
ふなばたの裏に、折釘をれくぎが打ち込んでありますね。一尺五寸ぐらゐ離して、二本まで」
宗助そうすけまた本堂ほんだう佛壇ぶつだんまへけて、圍爐裏ゐろりつてある昨日きのふちやた。其所そこには昨日きのふとほ宜道ぎだう法衣ころも折釘をれくぎけてあつた。さうして本人ほんにん勝手かつてかまどまへ蹲踞うづくまつて、いてゐた。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
折釘をれくぎ烏帽子ゑぼし掛けたり春の宿
俳人蕪村 (新字新仮名) / 正岡子規(著)
折釘をれくぎの数をちやんと数へてからでないと安心しない内田氏は、茶店に入るなり、脱いだ帽子を手にもつてあちこちと帽子掛を捜すらしかつたが、大学に牛小屋が無いと同じやうに