手厳てきび)” の例文
旧字:手嚴
「悪いことが流行はやり出した、ここは表通りではないけれど、そのうちには何か集めに来るだろう、その時は手厳てきびしく断わってやる」
大菩薩峠:10 市中騒動の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
ここに電気商岩田京四郎は非常な不利な立場となりカフェ・ネオンの頻繁ひんぱんな電気工事の詳細について手厳てきびしい訊問じんもんが始まった。
電気看板の神経 (新字新仮名) / 海野十三(著)
今までおだやかに機嫌きげんよく話していた長者ちょうしゃから突然こう手厳てきびしくやりつけられようとは、敬太郎は夢にも思わなかった。
彼岸過迄 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
柔和しい足立さんの言うことが私にはもう、まだるっこくなって来たもんですから、手厳てきびしく談じつけてやろうとすると足立さんが待てというて制する。
駅夫日記 (新字新仮名) / 白柳秀湖(著)
「はくらん病が買ひ候はん」も手厳てきびしいには違ひない。が、「東武とうぶの会に盆を釈教しやくけうとせず、嵐雪らんせつ是を難ず。翁曰、盆を釈教とせば正月は神祇しんぎなるかとなり。」
芭蕉雑記 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
そんなことをしていられるかどうか考えてみよとのご反問の手厳てきびしさ。君の心はよくわかった。けれど、「あんなおしゃらくは嫌ひだ」は少しひどすぎたりと思ふ。
田舎教師 (新字新仮名) / 田山花袋(著)
翌日からの胡軍こぐんの攻撃は猛烈を極めた。捕虜ほりょの言の中にあった最後の猛攻というのを始めたのであろう。襲撃は一日に十数回繰返された。手厳てきびしい反撃を加えつつ漢軍は徐々に南に移って行く。
李陵 (新字新仮名) / 中島敦(著)
和作の手厳てきびしい語調に、信一は思はずだるさうな眼を大きく見張つた。
朧夜 (新字旧仮名) / 犬養健(著)
手厳てきびしく来たね。一言もないよ。実は八人目が近々生れるのさ」
ぐうたら道中記 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
「閣下に、そう手厳てきびしく出られると、一言もありません。が、あきらめのために見ていただきたいのです。贋物にせものは覚悟の前ですから。持っている当人になると、怪しいと思いながら、諦められないものですから。ハヽヽヽヽヽヽ。」
真珠夫人 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
わしは腹が立って、手厳てきびしく跳ねつけてやったよ。あれはもう売っちまった。もう遅いよとナ。すると、それはいかん、是非こっちへ売れという。
疑問の金塊 (新字新仮名) / 海野十三(著)
あの金蔵という奴があばれ出したな——こうと知ったら、もう少し手厳てきびしくいましめておけばよかったと思いました。
大菩薩峠:05 龍神の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
あの方を手厳てきびしく催促させるのです。——実はあなただから、今打ち明けて御話しするが、あれは、わたしが印を押しているたいにはなっているが本当はわたしが融通したのです。
野分 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
平野老人はかぶりを振ったから、そそっかし屋の市川は一時いっとき、面を赤くしましたけれど、老人があんまり手厳てきびしくねつけたものですから、反抗の気味となって
「いやどうも、このごろは悪い奴が近辺へ入り込むので。なに、わずか三十文のところを手厳てきびしく言うでもないが、いくら饅頭屋まんじゅうやだからというて、甘くばかり見せておられぬわい」
「こりゃ、手厳てきびしい!」
大菩薩峠:36 新月の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)