おもんみ)” の例文
おもんみれば誰が保ちけん東父西母がいのち、誰がめたりし不老不死の藥、電光の裏に假の生を寄せて、妄念の間に露の命を苦しむ、おろかなりし我身なりけり。
滝口入道 (旧字旧仮名) / 高山樗牛(著)
横手の衝立ついたて稲塚いなづかで、火鉢の茶釜ちゃがまは竹の子笠、と見ると暖麺ぬくめん蚯蚓みみずのごとし。おもんみればくちばしとがった白面のコンコンが、古蓑ふるみの裲襠うちかけで、尻尾のつまを取ってあらわれそう。
菎蒻本 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
伏しておもんみるに先生の盛徳実にこれ国士無双、謙譲もつて人を服し、勤倹もつて衆を率きゆ。加ふるに経世の略、稜々の節、今の時に当つて先生を外にして、はた誰にか竢つあらむ。
誰が罪 (新字旧仮名) / 清水紫琴(著)
つらつおもんみる迄もないが、一八二五年ブーラールが死んでから百年目(正確に云えば百一年目)に僕が此の雑文を書くようになったのも、——少々阿呆陀羅あほだら経めくが——やっぱり、一樹の蔭
愛書癖 (新字新仮名) / 辰野隆(著)
伏しておもんみれば関節がゆるんで油気がなくなった老朽の自転車に万里の波濤はとうえて遥々はるばると逢いに来たようなものである、自転車屋には恩給年限がないのか知らんとちょっと不審を起してみる
自転車日記 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
伏ておもんみるに、陛下恭倹の徳あり、加ふるに聡明叡智の才を以てす。
政治の破産者・田中正造 (新字旧仮名) / 木下尚江(著)
おもんみれば人とうまれて日に三度みたびなんぞ如何いかんぞ飯食めるらむ
雀の卵 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
このくすぐつたさを處女しよぢよだとすると、つら/\おもんみるに、媒灼人なかうどをいれた新枕にひまくらが、一種いつしゆの……などは、だれもかないであらうか、なあ、みゝづく。……
木菟俗見 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)