後生大事ごしょうだいじ)” の例文
今も、十能の中に、かんかんとおこった炭火をたくさんに盛って、それを後生大事ごしょうだいじに抱えながら、二階の梯子はしごを上りにかかりました。
大菩薩峠:27 鈴慕の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
大辻の方は、「岩」の足型を後生大事ごしょうだいじかかえているのに対して、わが三吉は理科大学の造築場へ、月島からはこんできた青い土に眼をつけている。
地中魔 (新字新仮名) / 海野十三(著)
心をめし贈物おくりものは書生の悪戯いたずらに成りしとも知らず、大原満は奉書の包紙がしわにならぬよう、かけたる水引がまれぬようと後生大事ごしょうだいじに大なる風呂敷へ包み
食道楽:春の巻 (新字新仮名) / 村井弦斎(著)
淡島家の養子となっても、後生大事ごしょうだいじに家付き娘の女房の御機嫌ばかり取る入聟形気いりむこがたぎ微塵みじんもなかった。
こんな善良ぜんりょう人間にんげんでございますから、こちらの世界せかいうつっててからもいたって大平無事たいへいぶじ丁度ちょうど現世げんせでまめまめしく主人しゅじんつかえたように、こちらでは後生大事ごしょうだいじ神様かみさまつか
らちがあくまで、多市は用なし、「たまにゃブラついて来い」とおっ放されたが、懐中ふところにはちょッと重目おもめな預り物、後生大事ごしょうだいじにかかえているので、はらから楽しむ気になれない。
鳴門秘帖:01 上方の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「人間は植物性の食物だけでは生きていけませんよ、それでは骨を作る土台をあたえてくれませんからね。」そこで彼は自分のからだに骨の原料を供給するために一日の一部分を後生大事ごしょうだいじにささげる。
雑炊や後生大事ごしょうだいじといふことを
五百五十句 (新字旧仮名) / 高浜虚子(著)
こうしてお君は能登守から、箱に入れたまま紙取りの写真をいただいて帛紗ふくさに包み、後生大事ごしょうだいじに袖に抱えてこのお邸を立ち出でました。
大菩薩峠:13 如法闇夜の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
そして雷洋丸の爆沈事件のときも、彼は命にかえて、この箱を後生大事ごしょうだいじに守って、ここまで無事に持ってきたのである。
爆薬の花籠 (新字新仮名) / 海野十三(著)
娘が後生大事ごしょうだいじに抱えているそれを、よく見ると羅漢様の首でありましたから、駒井はいよいよ怪しみの思いに堪えることができません。
大菩薩峠:23 他生の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
貴様が手に入れて、とらの子のように後生大事ごしょうだいじにしていたのは、即ち、その昔ツクーワのつくった贋物で、しかも、ツクーワとは誰あろう、机博士、貴様の先祖だぞ。どうだ、これでわかったろう。
少年探偵長 (新字新仮名) / 海野十三(著)
といって被害を受けたのは当人ではなく、寝るから起きるまで、後生大事ごしょうだいじの般若の面が、あっという間もなく、わきの下から放れて飛びました。
大菩薩峠:28 Oceanの巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
来た時と同じように、町の隅の方の人目にかからないようなところを、手拭を頭からかぶって後ろへ流し、三味線を後生大事ごしょうだいじに抱えてさっさと歩いて行きます。
大菩薩峠:06 間の山の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
後生大事ごしょうだいじに抱えて来た琵琶を、そっとさしおいてから、きちんと座を構えると、つづいて茂太郎が前と同じように介添役かいぞえやく気取りで、少し前へ避けて坐り、さて
大菩薩峠:21 無明の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
うっかり御馳走になっていいものだかどうだか……米友は一合の酒と鰻の丼を後生大事ごしょうだいじにらめていました。
大菩薩峠:10 市中騒動の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
それをまたお松さんが、後生大事ごしょうだいじに、風呂敷に包んで持って来たのは、どうしたわけだろう。
大菩薩峠:26 めいろの巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
後生大事ごしょうだいじに、般若はんにゃめんを小脇にかかえて放さぬことは、いつもに変ることなく、軽快に砂原を走って、あえて疲れ気も見えないことは、山神奇童とうたわれた名にもそむかないようです。
大菩薩峠:26 めいろの巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)