当人とうにん)” の例文
旧字:當人
それで、みんなしてハンスをつれだしてきましたが、当人とうにんは、よんどころなくちんちくりんなうわっぱりの前をかきあわせて、はだか身をかくしました。
まして当人とうにんはよほど有難ありがたかったらしく、早速さっそくさまざまのお供物くもつたずさえておれいにまいったばかりでなく、その終生しゅうせいわたくしもと参拝さんぱいかさないのでした。
どうせそうならば、このひとのいい薬屋くすりやさんにやって、りっぱに、幸福こうふくそだててもらったほうが、どれほど、当人とうにんにとってもいいことかしれないとかんがえました。
二番めの娘 (新字新仮名) / 小川未明(著)
対世界の見地けんちより経綸けいりんを定めたりなど云々うんぬんするも、はたして当人とうにん心事しんじ穿うがち得たるやいなや。
又弁解も何もない、平岡の云ふ所が一々根拠のある事実なら、——御父おとうさんはう云はれるのだ。——もう生涯代助には逢はない。何処どこつて、なにをしやうと当人とうにんの勝手だ。
それから (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
橘屋たちばなや若旦那わかだんなは、八百ぞううつしだなんて、つまらねえお世辞せじをいわれるもんだから、当人とうにんもすっかりいいンなってるんだろうが、八百ぞうはおろか、八百丁稚でっちにだって
おせん (新字新仮名) / 邦枝完二(著)
それをうちすもののないかぎり、いつしか、そのものは、まったくあほうものにされてしまうばかりでなく、当人とうにんも、自分じぶん自分じぶんをあほうとおもいこんでしまうようになるものです。
赤いガラスの宮殿 (新字新仮名) / 小川未明(著)