引留ひきとめ)” の例文
しかし長く止まって居る事が出来ぬというお話でござれば長く引留ひきとめは致さぬけれども、とにかく私の一了簡りょうけんめる訳にいかないから
チベット旅行記 (新字新仮名) / 河口慧海(著)
菊「大層お帰りがお遅うございますから、また神原様でお引留ひきとめで、御迷惑を遊ばしていらっしゃることゝ存じて、先程からお帰りをお待ち申して居りました」
菊模様皿山奇談 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
だんこくを移して、いとまを告げて去らんとすれば、先生なおしばしと引留ひきとめられしが、やがて玄関げんかんまで送り出られたるぞ、あにらんや、これ一生いっしょう永訣えいけつならんとは。
引留ひきとめ其金にて不足も有ば濱町の堀部彌兵衞片岡源吾右衞門にて廿卅の金は借候べしと申渡し又貴樣の刀は寸延すんのびと見えたり室内のはたらきには不便ふべんなればこれまゐらせんと則光のりみつの二尺五寸有しを
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
お登和は一刻も早く立去りたし「イイエ、家にも用事がありますからおいとまを致します。奥さん、おおきにお邪魔じゃまを致しました。どうぞ私どもへもお遊びにいらしって下さい」と妻君の引留ひきとめるを
食道楽:春の巻 (新字新仮名) / 村井弦斎(著)
こうしてお引留ひきとめした訳です。
湖畔亭事件 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
傳吉は引留ひきとめてお前は何處かで見た樣なれど思ひ出されずと言ば女は傳吉を倩々つら/\見て私も見たお方の樣に思ひしが若しや五年前柏原の森田屋へとまり給ひし傳吉樣にては御座なきやといふに此方ははたと手を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
歸さず是非お附合つきあひなされよと無理に引留ひきとめまだ日も高ければ夕刻ゆふこく迄には寛々ゆる/\としても歸らるゝなり決して御迷惑ごめいわくは掛ませぬといやがる千太郎のひきそでひき萬八の棧橋さんばし繋合もあひたる家根船へ漸々やう/\にして乘込のりこませり是ぞ千太郎と久八が大難だいなんもとゐとこそは成りにけれ
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)