)” の例文
成程なるほど善悪にや二つは無えが、どうせ盗みをするからにや、悪党冥利みやうりにこのくれえな陰徳は積んで置きえとね、まあ、わつちなんぞは思つてゐやすのさ。
鼠小僧次郎吉 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
はばかりながら磯の安松だ、三尺高い木の上から小唄の良い喉を海の向うの房州の阿魔っ子に聴かせやりてえくらいのものだ
甲「ヘエ、誠にはア、魂消まして、どうかまア止めえといったら止めてはなんねえって叱られた、随分道中を大事に」
真景累ヶ淵 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
七重八重と言ひえが、十重二十重とへはたへに嫁の衣裳をかけ並べ、木戸も潜戸くゞりも開けて、御町内の衆へ豊樂の見物勝手だ、いやその評判といふものは——
送らんでいというに何故そうだかなア、われア死んだ爺様とっさまの時分から随分世話も焼かしたがうちの用も能く働いたから、なんぞ呉れえと思うけれども何もえだ
真景累ヶ淵 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
知合から知合を辿たどつて、向柳原の叔母さんのところへ來て、——お前さんに傳手つてがあるちう話を聞いて來たが、錢形の親分さんに逢はせて貰れえ
太「なに用はなえだからみな送りえとおめえまして、名残い惜いがさみい時分だから大事にしてねえ」
真景累ヶ淵 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
、ちゃんと心得てやがる、その気で今日から仲間付き合いだ、宜いか貝六、前祝に一杯やりえが、手前五百や一貫は持ってるだろうな、男のたしなみだ
大江戸黄金狂 (新字新仮名) / 野村胡堂(著)
舁夫「どうせ船橋へかえりですが、おやすねげえもんで、けえりですから一杯いっぺえ飲めりゃア宜いんで、けえり駕籠でござえやすから、お安く乗っておくんなせえ、まだ船橋まで余程よっぽど有りますぜ」
「そんなイヤな代物じゃ無いんで、ヘッ、入山形の二つ星、眉は落したが、お灯明をあげえ位の代物で——」
「それぢやあつしも行つて見ますよ。二千兩位の目腐れ金は欲しかアねえが、相手の仕掛けが見て置きえ」
「どうだ、お狩場の四郎の言ひ草ぢやねえが、何んと驚いたか——と言ひえくらゐのものだ」
「ちよツと聞きえが、先刻此路地へ追ひ込んだ者があるが、氣が付かなかつたかえ」
「打ち殺してもやりえが、——あの女には、お前まだ未練があるだらうねえ」
「お、くすぐえ」
大江戸黄金狂 (新字新仮名) / 野村胡堂(著)