巫子みこ)” の例文
野蛮国や半開国には巫子みことか魔術師とかいう者が必ずあるが、これが通辯となって、霊魂のいうことを生きた人間に翻訳して聞かせる。
我らの哲学 (新字新仮名) / 丘浅次郎(著)
香央は、このうえなお娘の幸福を神に祈るために、巫子みこ祝部はふりべをあつめて、神前に御湯みゆをそなえる御釜祓みかまばらいの神事をとり行なった。
その頃ホームという有名な男の巫子みこがあったが、ファラデーは面会を断わった。理由は、時間つぶしだというのであった。
お千は若いときから信州のある神社の巫子みこであったが、二十歳はたちを越えてから巫子をやめて、市子を自分の職業としていた。彼女は一生独り身であった。
半七捕物帳:58 菊人形の昔 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
「あれや、建部の巫子みこにちがいないわ。巫子というものは、どこの巫子も色が白い。日蔭の花か、白狐びゃっこみたいだ」
私本太平記:02 婆娑羅帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
肩を脱いだところをみると、左のわきの下に、大きなかわらけほどの傷口があるのだった。巫子みこは言葉を継いで
即ち小林六太夫の操座では男子は人形を舞はし、婦女は巫子みことなつて占卜をしてゐた。之れは恐らく非常に古くから彼等の取つてゐた生業なりはひだつたのであらう。
同じ方でいらっしゃろうとは、あの打伏うちふし巫子みこに聞いて見ても、わからないのに相違ございません。
邪宗門 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
名剣神社の拝殿には、あかの袴の、お巫子みこが二人、かよいをして、歌の会があった。
菊あわせ (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
もうい、好い。えらい巫子みこさん。
巫子みこが來て振り鳴らすすゞ…………
思ひ出:抒情小曲集 (旧字旧仮名) / 北原白秋(著)
その人柄や身装みなりによって察すれば、彼女もおころと同様に市子か巫子みこのたぐいであるらしかった。
半七捕物帳:58 菊人形の昔 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
行くと、巫子みこという神に仕える女悪魔に出会った。彼女は子をつれて歩いていたが、子供はわれらを見るなり、天竺人、天竺人、と大声で叫んだ。悪魔がいわしめたものであろう
随筆 新平家 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
萌黄もえぎや、金銀の縫箔ぬいはく光を放って、板戸も松の絵の影に、雲白くこずえめぐ松林しょうりんに日のす中に、一列に並居なみいる時、巫子みこするすると立出たちいでて、美女のおもていち人ごとに、式の白粉を施し、紅をさし
南地心中 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
死んだおふくろと申すのは、もと白朱社はくしゅしゃ巫子みこで、一しきりは大そう流行はやったものでございますが、きつねを使うと云ううわさを立てられてからは、めっきり人も来なくなってしまったようでございます。
(新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
「ええ、うるせえ。出ろと云ったら素直すなおに早く出て貰おう」と、半七は小膝を立てながら云った。「おめえばかりじゃあねえ。そこにいる行者様もその巫子みこも、みんな一緒に出てくれ」
半七捕物帳:26 女行者 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)