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川鐵
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かはてつ
牛込の
方へは、
隨分しばらく
不沙汰をして
居た。しばらくと
言ふが
幾年かに
成る。このあひだ、
水上さんに
誘はれて、
神樂坂の
川鐵(
鳥屋)へ、
晩御飯を
食べに
出向いた。
時に、
川鐵の
向うあたりに、(
水何)とか
言つた
天麩羅屋があつた。くどいやうだが、
一人前、なみで
五錢。……
横寺町で、お
孃さんの
初のお
節句の
時、
私たちは
此を
御馳走に
成つた。
が、
吃驚するやうな
大景氣の
川鐵へ
入つて、たゝきの
側の
小座敷へ
陣取ると、
細露地の
隅から
覗いて、
臆病神が
顯はれて、
逃路を
探せや
探せやと、
電燈の
瞬くばかり、
暗い
指さしをするには
弱つた。