小腕こがいな)” の例文
突然いきなり爺様じいさんの背中へつかまると、手水鉢のわきに、南天の実の撓々たわたわと、霜に伏さった冷い緋鹿子ひがのこ真白まっしろ小腕こがいなで、どんつくの肩をたたくじゃないか。
南地心中 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
たしなめるように云って、お妙は上衣を引取ひっとって、あらわに白い小腕こがいなで、羽二重でゆわえたように、胸へ、薄色を抱いたのである。
婦系図 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
今しがた見えずなりたる、美人の小腕こがいな邪慳じゃけんつかみて、身をのがれんともだえあせるを容赦ようしゃなく引出ひきいだしぬ。美人は両手に顔を押えて身をすくましておののきいたり。
活人形 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
人に物を思わせたる報酬むくいはかくぞとののしりて、下枝が細き小腕こがいなを後手にじ上げて、いましめんとなしければ、下枝は糸よりなお細く、眼を見開きてうらめしげに
活人形 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
思わず、ハッと吐息といきして、羽織の袖を、ひとしく清く土に敷く、お町の小腕こがいな、むずと取って、引立てて
白金之絵図 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
(瞳をみひらくとともに、小腕こがいなしびれ、足なえて、崩るるごとく腰を落し、半ば失心す。)
山吹 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
くわッと逆上のぼせて、小腕こがいなひきずり退けると、水をねて、ばちや/\と鳴つた。
夜釣 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
「あれ、」とげにかかる、小腕こがいなをむずと取られた。なりも、ふりも、くれない白脛しらはぎ
黒百合 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)