小楊子こようじ)” の例文
三郎が今夕飯を済ませて、小楊子こようじを使いながら、鼻唄かなんか歌っている所へ、ヒョッコリと久し振りに明智小五郎が訪ねて来ました。
屋根裏の散歩者 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
銭亀ぜにがめほどのわりがらこに結って、小楊子こようじの小々太い位なのではあるが、それこそ水の垂れそうな鼈甲べっこう中差なかざしと、みみかきのついた後差うしろざしをさした。
蒸せたか蒸せないかを知るには小楊子こようじかあるいは外の細いものを真中へ通してみて何も附かなければよし、生々なまなましい処が附いて来ればまたしばらく蒸します。
食道楽:冬の巻 (新字新仮名) / 村井弦斎(著)
堪能たんのうしたといったように、しきりと小楊子こようじで歯をせせくっていましたが、座敷へはいってきた小女の顔をみると、やんわりと、まずこんなふうにいったもので——。
だが監禁室にはそんな棒切れは厳禁になっている。いや棒切れどころか、硬いものはくぎ一本小楊子こようじ一本でも許されないのだ。——遂にこの計画は実行ができないのであろうか。
鍵から抜け出した女 (新字新仮名) / 海野十三(著)
岩魚いはなだいを三びきつて咽喉のどかはかすやうな尋常じんじやうなのではない。和井内わゐない自慢じまんのカバチエツポのふとつたところを、二尾ふたつ塩焼しほやきでぺろりとたひらげて、あとをお茶漬ちやづけさら/\で小楊子こようじ使つかふ。……
十和田湖 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
吉川は少し意外そうな顔をして、今まで使っていた食後の小楊子こようじを口から吐き出した。それから内隠袋うちがくしさぐって莨入たばこいれを取り出そうとした。津田はすぐ灰皿の上にあった燐寸マッチった。
明暗 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
その秘術というは、なんでも木片もくへんをナイフでけずって、小楊子こようじみたいなものを造り、それを叩いて「動け!」というと、その木屑が、ちあがってヒョックリ、ヒョックリ躍り出す。
人造物語 (新字新仮名) / 海野十三(著)
その外とち小楊子こようじくわえながら酒を飲むと酔わないとか、テンポコ梨の実をみながらお酒を飲むと酔わないとか申すのもやっぱりその物にアルコール分を吸収せられるからでしょう。
食道楽:冬の巻 (新字新仮名) / 村井弦斎(著)
大匙へ一杯ずつすくって油の中へそうっと落して気長に揚げますが揚がったと思う時分小楊子こようじを刺し込んでみて何も着いて来なければ新聞紙か西洋紙の吸取紙すいとりがみの上へ一つ一つ置いて油を切ります。
食道楽:秋の巻 (新字新仮名) / 村井弦斎(著)