小伜こせがれ)” の例文
「叔母御。——この腕白をご存じじゃろが。これは、二寺ふたつでらの宿で、桶屋おけやなどしていた遠縁の新左衛門が小伜こせがれで、市松というわっぱだが」
新書太閤記:03 第三分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「十七の小伜こせがれ……小伜様。出す奴も出す奴だが、出る奴も出る奴だ。しかし、お辞儀をしてしまうには、若いのを出した方がいいかも知れねえ」
大菩薩峠:26 めいろの巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
ロパーヒンは「桜の園」の農奴の小伜こせがれからのし上って一かどの商人になり、ついにこの荘園の新しい主人に納まるのであるが、チェーホフのつもりでは
彼は無我夢中で爪をんで、小伜こせがれめにだまされたか、口惜くやしや口惜しやとがみをしていたという。
家康 (新字新仮名) / 坂口安吾(著)
いよいよしゃべりだしたぞ。あっはっはっ、探険隊の奴らも小伜こせがれも、まさかあの小伜の身体を包んだゴム袋の中に、無線電話機が隠してあるとは気がつかなかろう。見ていたまえ。
大空魔艦 (新字新仮名) / 海野十三(著)
「いや、そうでもあるまい——この藤作と申す小伜こせがれを、すぐさまつれてまいるがよいぞ」
本所松坂町 (新字新仮名) / 尾崎士郎(著)
……そこで当然頼兼の妾と、その小伜こせがれとを隠したのさ。……が姥はこう云うのだ『京の町からは出ていない』とな。……妾と小伜とが京の町に、まだ住んでいるとこう云うのさ。
あさひの鎧 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
稽古けいこのたびごとに、うら若かったあによめといっしょに、いたずら盛りの小伜こせがれかく申す自分も、ちょこなんとお相伴しょうばんして、窮屈な茶室にしびれを切らせながら、結構な御ふくあいなどと
茶の本:01 はしがき (新字新仮名) / 岡倉由三郎(著)
「おれは彼は使えると思った、だがどうやらそんな必要はなくなってきたらしい、まだそうときまったわけではないが、宮本の小伜こせがれをどうにかすれば、手を切ってしまってもいいかもしれぬ」
「慾のない小伜こせがれめが。一家いっけ一族の面目ってことを知りくさらねえのか。」
艸木虫魚 (新字新仮名) / 薄田泣菫(著)
「ええ、耳うるさい、ませた口をきく小伜こせがれわいの。らざるおせッかいをいうよりは、婆を討つか、討たれるか、武蔵っ、はようらちをあけい」
宮本武蔵:04 火の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
こいつは耐らぬ。……いよいよ俺を殺すつもりだな。この小伜こせがれめ! この餓鬼め!
神州纐纈城 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
「きさまはこんな小さいじぶん、饅頭や菓子、三時に貰う菓子や饅頭を人に売って銭にした、次には古い肌着や足袋などだ、七千二百石の旗本の家に生れ、まだ十歳にもならぬ小伜こせがれがだ、そうだろう」
末っ子 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
「知らずや関平。荊州はすでに呉の孫権に奪られておるぞ。——汝、家なき敗将の小伜こせがれ。何を目あてに、なお戦場をまごまごしておるかっ」と、ののしった。
三国志:10 出師の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「まだ、ごぞんじありませぬか。これこそ、おかしらが、まえまえからねらっていた武田家たけだけ小伜こせがれ伊那丸いなまるです」
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「耳も眼も、血もある人間に、それはご無理。——おのれっ、成田兵衛なりたのひょうえ小伜こせがれに、雑人ばら、今日のこと、覚えておれよ」築地越しに、呶鳴ると、どっと外で嘲笑あざわらう声がした。
親鸞 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「ひかえなされ、小伜こせがれ。孫のようなおぬしなどからおだてられて、よろこぶ婆ではないわいの」
宮本武蔵:04 火の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「いまはもう堪忍ならぬ。近ごろの宗家そうけ小伜こせがれどもは祝氏ノ三傑などといわれていい気になり、われら同族の長上までを軽侮けいぶしているふうがある。——やいっ、馬をけ! 者ども」
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
鳥なき里の蝙蝠こうもりとかで、自分以上な者はないと、何ともかとも、手のつけられん小伜こせがれじゃ。ひとつその増上慢ぞうじょうまんの鼻を、折ッぴしょッてくだされば、いっそ、当人にはしあわせというもんじゃろ
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
それは李応りおうを味方に招きたいことです。祝氏の一子のため、不覚な傷を負ったようですが、同族の小伜こせがれと、つい控え目に、甘くあしらっていたせいでしょう。撲天鵰はくてんちょうの李応は一人物です。
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
まだ三十にも届かないこの小伜こせがれの弥九郎にすら、秀吉は、それを見る。
新書太閤記:07 第七分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「かねて聞く関羽の小伜こせがれ。汝また非業の死を亡父ちちならうか」
三国志:11 五丈原の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「それじゃ、若い女を連れている小伜こせがれだろう」
親鸞 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
小伜こせがれを渡せ」
新書太閤記:03 第三分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)