寸々すんずん)” の例文
初めは呻吟しんぎん、中頃は叫喚きょうかん、終りは吟声ぎんせいとなり放歌となり都々逸どどいつ端唄はうた謡曲仮声こわいろ片々へんぺん寸々すんずん又継又続倏忽しゅっこつ変化みずから測る能はず。
墨汁一滴 (新字旧仮名) / 正岡子規(著)
衰えは春野焼く火と小さき胸をかして、うれいは衣に堪えぬ玉骨ぎょっこつ寸々すんずんに削る。今までは長き命とのみ思えり。
薤露行 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
留りては裂き、行きては裂き、裂きて裂きて寸々すんずんしけるを、又引捩ひきねぢりては歩み、歩みては引捩りしが、はや行くもくるしく、後様うしろさま唯有とあ冬青もちの樹に寄添へり。
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
終日しゅうじつかぜおとと、あめおとと、まれにとりこえしかしなかった平原へいげんが、たちまちのあいだに、くさこそぎにされて、寸々すんずんにちぎられ、そらばされるような大事件だいじけんがりました。
戦友 (新字新仮名) / 小川未明(著)
私は今度の事件について先生に手紙を書こうかと思って、筆をりかけた。私はそれを十行ばかり書いてめた。書いた所は寸々すんずんに引き裂いて屑籠くずかごへ投げ込んだ。
こころ (新字新仮名) / 夏目漱石(著)