孫子まごこ)” の例文
「あの妖婦、あの毒の花のような娘へ、夜光の短刀を探せよといいつけて、おぬしは今の考えが順当に孫子まごこへ伝わってゆくと思うのか」
江戸三国志 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
『お師匠ししやうさま、孫子まごこつたはることでございますから、どうかまあ私共わたしどもにもささうな苗字めうじを一つおねがまをします。』
ふるさと (旧字旧仮名) / 島崎藤村(著)
保太郎氏は愚者のむれからおいてきぼりにされた図体を小刻みにゆすぶりながら「僕の画を買つておくのは、田地を持つてゐると同じで、屹度孫子まごこ利益ためになるよ。」
この時婦人おんなは一息つきたり。可哀あわれなるこの物語は、土地の人口碑こうひに伝えて、孫子まごこに語り聞かす、一種のお伽譚とぎばなしなりけるが、ここをば語るには、誰もかくすなりとぞ。
照葉狂言 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
孫子まごこまでの話の種として、この大茶目の武者振りを見て置かなければならないと人気が立ちました。
大菩薩峠:33 不破の関の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
しかしながらあらゆる武勇伝を超えて国民絶讃の的となり、全都民の涙を絞らしめ、孫子まごこの末までの語り草となって残ったものは、帝都の空に散華さんげした体当り戦闘機の諸勇士であった。
偉大なる夢 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
世間なみにすると少し甘いように見えるが、ソレでも私方の孫子まごこかぎって別段に我儘わがままでもなし、長少たわぶれながら長者の真面目に言う事はきいて逆う者もないから、余り厳重にせぬ方が利益かと思われる。
福翁自伝:02 福翁自伝 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
馬「へえ、しっかり持ちたくも此の塩梅あんばいでは持てそうもございません、旦那忘れても釣はおしなさいよ、生涯孫子まごこの代まで釣ばかりはさせるものじゃアありません、驚きましたねえ、あゝ/\、此処は何処でしょう」
「つく/″\生きてるのが厭になつちまひました。もう/\孫子まごこの代まで腰弁こしべんなざあ真つ平ですよ。」
いろいろと生家さとに掛けた費用のことを思い、世間の評議をも懸念けねんして、これがもし実の孫子まごこであったら、いかようにも分別があると言いたげな飽くまで義理堅い継母の様子は
夜明け前:04 第二部下 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
あおい炎の息を吹いても、素奴しゃつ色の白いはないか、袖のあかいはないか、と胴の狭間はざま、帆柱の根、錨綱いかりづなの下までも、あなぐり探いたものなれども、孫子まごこけ、僧都においては
海神別荘 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
長い浮世に短い命、こういうものが二度とふたたび、日本の土地へ参りましょうならお目にかかりまする、孫子まごこに至るまでのお話の種、評判の印度人、ガンジス河の槍使いはこれでござい!
「じゃ、使命を孫子まごこに伝えて行くというのか」
江戸三国志 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「違えねえ、折助なんぞはお歯に合わねえという思召しなんだから、それでお言葉も下し置かれねえのだろう。ああ、情けなくなっちまわあ、孫子まごこの代まで折助なんぞをさせるもんじゃねえ」
大菩薩峠:13 如法闇夜の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)