奴原やつばら)” の例文
帝王何かあらんや、どころではなく、生来帝王の天質がなく、帝王になったところで、何一つ立派なことの出来る奴原やつばらではないのである。
日本文化私観 (新字新仮名) / 坂口安吾(著)
「若僧やるな! 鳥刺しといい貴様といい、愈々胡散うさん奴原やつばらじゃ。どこのどいつかッ。名を名乗らッしゃい? どこから迷って来たのじゃ!」
「拙者にも縁のある奴原やつばらだ。と云うより拙者の先生に、深い縁故のある奴だ、退治れば先生のお為にもなる。——其方そちは逃げろ! 一人で十分!」
前記天満焼 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
ブラブラ遊んで暮らすのを誇りとしている一部上流社会の奴原やつばらを初めとし、ろくろく食う物も食えぬくせに、汗を流して努力する事を好まぬ下等人士に至るまで
本州横断 癇癪徒歩旅行 (新字新仮名) / 押川春浪(著)
おもうに老猴よく人の不浄を嗅ぎ分くる奴を撰び教えて帯刀させ、神前へ不浄のまま出る奴原やつばらを追い恥かしめた旧慣が本邦諸処にあったから、猴をイソノタチハキというたので
ますます栄耀えいようの身となったゆえ、もはや、旧悪が暴露するうれいもないと考えているのであろう、一味の奴原やつばらが、われとわれから、そなたの面前に、みにくい顔をさらして見せたも、こりゃ
雪之丞変化 (新字新仮名) / 三上於菟吉(著)
如何だッて、この世の中に攘夷なんて丸で気狂いの沙汰じゃないか。「気狂いとは何だ、しからん事を云うな。長州ではチャント国是こくぜが極まってある。あんな奴原やつばら我儘わがままをされてたまるものか。 ...
福翁自伝:02 福翁自伝 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
かかる訳で君等の荷物も、無論吾儕われわれのもそのまま置捨てることにした。ああ巴里も、わが巴里も、ついに独逸の奴原やつばら蹂躙じゅうりんせらるるのか。小シモンヌが涙ぐんだのを見て巴里を離れるのは慚愧ざんきを感ずる。
新生 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
「いまいましいメリケン空軍の奴原やつばらだ」
空襲葬送曲 (新字新仮名) / 海野十三(著)
「卑怯な奴原やつばら、束になって来い」
十字架観音 (新字新仮名) / 野村胡堂(著)
それにへつらう末社の奴原やつばら
大菩薩峠:41 椰子林の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
かういふことに敏感で、特に根に持つ秀吉だから、関白を怖れぬ不届きな奴原やつばら、と腹をたてた。
二流の人 (新字旧仮名) / 坂口安吾(著)
「あいや客人、日置正次殿、我等必死のお願いでござる、貴殿の弓勢ゆんぜいお示し下され! 寄せて参ったは、不頼のともがら、あばら組と申す奴原やつばら、討ち取って仔細無き奴原でござる!」
弓道中祖伝 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
翌朝馳走を備えた所へ果して八道人来り、飲食しおわるを俟ってまず上座の頭を打ち隅へ駆り入れると、たちまち変じて金銭一おうと成った。跡の奴原やつばらも次第に駆り入れて金銭八盎が出来た。
「藤作のやり方が悪かったにしても、場銭をさらいに来やがったと、こう云われては腹に据えかねる……そうでなくてさえ怨みの重なる、高萩一家の奴原やつばらだ、この際一気に片づけてしまえ!」
剣侠 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
読者をぞっとさせる底の珍譚山のごとく、上は王侯より下乞丐こつがいに至るまで聞いて悦腹せざるなく、ロンドンに九年た中、近年大臣など名乗って鹿爪らしく構え居る奴原やつばらに招かれ説教してやり
聚楽じゅらく奴原やつばらにござりますよ」
血ぬられた懐刀 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)