奥深おくぶか)” の例文
旧字:奧深
代官町だいかんまちの大一と云う店で、東京に二箱仕出す。奥深おくぶかい店は、林檎と、箱と、巨鋸屑おがくずと、荷造りする男女で一ぱいであった。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
しかしながら風が少しも吹かず、一体に空気が湿つぽく落着いて居て、夕方からのち、街にあかりくと、霧をとほす温かい脂色やにいろの光がすべての物に陽気なしか奥深おくぶかい陰影を与へ
巴里より (新字旧仮名) / 与謝野寛与謝野晶子(著)
ステンド=グラスをとおしてあおぐ、あの奥深おくぶか大空おおぞらのようだったので、かれってうまれた創造力そうぞうりょくは、なにをかきあらわしていいか、あたまなかで、出口でぐちをしきりとさがしたのです。
天女とお化け (新字新仮名) / 小川未明(著)
あの、現界げんかい景色けしき同一どういつかとおつッしゃるか……左様さようでございます。格別かくべつちがってもりませぬが、ただ現界げんかいやまよりはなにやら奥深おくぶかく、かみさびて、ものすごくはないかとかんじられるくらいのものでございます。
そういって、いわつばめは、だんだん黄昏たそがれていく、奥深おくぶかそら見上みあげていました。
しんぱくの話 (新字新仮名) / 小川未明(著)