天然痘てんねんとう)” の例文
日の出丸という、オットセイ猟船は、船員が、一人残らず天然痘てんねんとうにかかって、全滅というときに、運よくも海岸に流れついて助かった。
無人島に生きる十六人 (新字新仮名) / 須川邦彦(著)
天然痘てんねんとうにかからないためには種痘をしなければならない、あばたづらになる代りとして、腕の一部分にメスを入れられるのだ。
青べか物語 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
疱瘡神ほうそうがみを祭らなくなっても、種痘をさえほどこせば、たとえときどき天然痘てんねんとうが流行しても、少しもおそれることなくらせるようになりました。
ジェンナー伝 (新字新仮名) / 小酒井不木(著)
これは天然痘てんねんとうにかかった牛からその病菌を含んだ痘苗とうびょうというものをつくり、それを人間に植えつける方法なのです。
ルイ・パストゥール (新字新仮名) / 石原純(著)
去年きょねん、チフスと天然痘てんねんとう予防注射よぼうちゅうしゃをしたよ。」と、ぼくは、こたえたのです。すると、ともだちは
世の中のために (新字新仮名) / 小川未明(著)
あの女のおもな近親だった将軍夫人が不意に、最も近しい相続者に当たる二人のめいを、両方とも一時に亡くしてしまったのだ。——どちらも天然痘てんねんとうで同じ週に死んだのだ。
こっちのあばたも内済ないさいにしたいくらいなところだから、ただでえる毛をぜにを出して刈り込ませて、私は頭蓋骨ずがいこつの上まで天然痘てんねんとうにやられましたよと吹聴ふいちょうする必要はあるまい。
吾輩は猫である (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
(彼はそれから半年はんとしほどのち天然痘てんねんとうかかって死んでしまった。)僕等は明るい瑠璃燈るりとうしたにウヰスキイ炭酸たんさんを前にしたまま、左右のテエブルにむらがった大勢おおぜい男女なんにょを眺めていた。
彼 第二 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
今年ことし三月さんぐわつなかばより、東京市中とうきやうしちうおだやかならず、天然痘てんねんとう流行りうかうにつき、其方此方そちこちから注意ちういをされて、身體髮膚しんたいはつぷこれを父母ふぼにうけたりあへそこなやぶらざるを、と父母ふぼおはさねども、……生命いのちしし
大阪まで (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
まず牛痘ぎゅうとうにかかった人をたずねだして、その人がはたして、天然痘てんねんとうの流行時に、罹病りびょうをまぬかれたかどうかを正確にとりしらべるよりほかはないのでした。
ジェンナー伝 (新字新仮名) / 小酒井不木(著)
昔の時代にはコレラやペストや天然痘てんねんとうなどの伝染病がひどく流行し、それで数えきれないほどたくさんの人々の生命を奪ったことも、ずいぶん度々あったのでした。
ルイ・パストゥール (新字新仮名) / 石原純(著)
エドワードにぶたの疱瘡ほうそうのうみをうえると八日目にできものが生じました。そこでかれは天然痘てんねんとうのうみをうえましたが、エドワードは天然痘にかかりませんでした。
ジェンナー伝 (新字新仮名) / 小酒井不木(著)
免疫というのは、かなり古くから知られていた事実で、例えば天然痘てんねんとうにかかった人が癒えてしまうと、今度は二度とかかることがめったにないというのは、それであります。
ルイ・パストゥール (新字新仮名) / 石原純(著)