大風おおふう)” の例文
ツェねずみはプイッとはいって、ピチャピチャピチャッと食べて、またプイッと出て来て、それから大風おおふうに言いました。
ツェねずみ (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
狭い楽屋のとっつきに、大風おおふうな顔をして腕を組み、圓太がいた。圓朝の顔を見て、ニコリともしないで顎をしゃくった。
小説 円朝 (新字新仮名) / 正岡容(著)
神楽師かぐらしとは言いながら、変り種ばかり集まっていますから、神楽師にしては人間が大風おおふうだと思召おぼしめすかも知れません、事実、神楽は道楽のようなもので
大菩薩峠:27 鈴慕の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
ちょうどおかみさんは、獣の死骸しがいのまん中に帳場にすわっていた。顔つやのよい愛嬌あいきょう笑いのある美しい女で、彼がやって来た訳を知ると、大風おおふうな様子をした。
「おい、庄吉、故郷に近くなったせいか、急に大風おおふうになったな。えいこら、もちっと、神妙にせい。清兵衛が気を揉んでいるのが、お前にはわからないのか」
ボニン島物語 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
「もしもし、大高うじ暫時しばらく、大高氏。」と大風おおふうに声を掛けて呼んだのは、小笠おがさ目深まぶかに、墨の法衣ころも
日本橋 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
政宗の幼い時は人に対して物羞ものはじをするような児で、野面のづら大風おおふうな児では無かったために、これは柔弱で、好い大将になる人ではあるまいと思った者もあったというが
蒲生氏郷 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
その時背後で、異様なしゃがれ声が起った。三人が吃驚びっくりして後を振り向くと、そこには、執事の田郷真斎がいつの間にかはいり込んでいて、大風おおふうな微笑をたたえて見下みおろしている。
黒死館殺人事件 (新字新仮名) / 小栗虫太郎(著)
日頃から私の態度を目して「大風おおふうで生意気だ。」とにらんでいた折からだったので、これが条件として執りあげられ、やがてリンチの候補者に指摘されるに至ったらしいのであるが
鬼涙村 (新字新仮名) / 牧野信一(著)
天性、遊蕩児にできているのか、女たちを、怒らせたり、笑わせたり、嬉しがらせることに、妙を得ていて、しかも、大風おおふうな贅沢をいいちらし、ふところに一文なしとは影にも見せない。
大岡越前 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「客人何々を御存じか」などと風流志道軒の昔を今に大風おおふうな口の利き方の講釈師ありせば、これまた、速記も同じような大口利いていたからである。
もう既にいっぱしの荒武者気取りで、善光寺前の藤屋という宿へ、大風おおふうに一泊を申し込んで番頭を驚かせました。
大菩薩峠:24 流転の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
水流つるさんにまで鉾先ほこさきが向いて来たというのは、お前さんのその短気な大風おおふうたたったということを考えてもらわなければならんのだが、今が今どう性根を入れ換えてくれという話じゃない。
鬼涙村 (新字新仮名) / 牧野信一(著)
『主人の物だと思って大風おおふうに云うな』
新編忠臣蔵 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
鷲は大風おおふうに云いました。
よだかの星 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
五人の頭が、鳶口を振り上げて、よいやさのよいやさのと、かけ声ばかりは勇ましく、振袖が大風おおふうに指摘している路面に、ほんの少しばかり頭を出しただけの小石を掘りにかかる。
大菩薩峠:29 年魚市の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
と、大風おおふうあござし。
江戸三国志 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
かえって旅装かいがいしく草鞋わらじがけか、或いは足駄がけで、さっさと五里十里の道を苦としなかったもの、それを今は、大風おおふうに通し駕籠でなければ宿次ぎで、甲州へ急がせようとする。
大菩薩峠:21 無明の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
しかも最初に御用を言いつけたのは、大風おおふうな侍の言いぶりであったのに、二度目に確めに行った時の返事は、なまめかしい女の声であったということが、この酒屋の者の話の種でありました。
大菩薩峠:17 黒業白業の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
この途端に、すっと入違いに無言で、大風おおふうに入って来た人がありました。
大菩薩峠:32 弁信の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)