おおく)” の例文
この時は狐に化かされている時の状態と同じで丁度酔漢が酔った時におおくの人の為すべき行為を、自己命令でやる心理とよく似ている。
ばけものばなし (新字新仮名) / 岸田劉生(著)
さて掙人かせぎにんが没してから家計は一方ならぬ困難、薬礼やくれいと葬式の雑用ぞうようとにおおくもない貯叢たくわえをゲッソリ遣い減らして、今は残り少なになる。
浮雲 (新字新仮名) / 二葉亭四迷(著)
汝はベタニヤのマルタの心を以て基督につかえんと欲し「供給のことおおくして心いりみだれ」(路加ルカ伝十章四十節)たるなるべし
基督信徒のなぐさめ (新字新仮名) / 内村鑑三(著)
一、酒は釣詩鈎ちょうしこうの意をもて三五さん用ゆるは可なり、おおくとも七盞を過ぐべからず、この数を越る飲徒は荘中に入るを許さず
下谷叢話 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
一 言葉を慎みておおくすべからず。仮にも人をそしり偽を言べからず。人のそしりきくことあらば心におさめて人に伝へかたるべからず。そしりを言伝ふるより、親類ともなか悪敷あしくなり、家の内おさまらず。
女大学評論 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
なかなか浮み上る程には参らぬが、デモ感心にはおおくも無い資本をおしまずして一子文三に学問を仕込む。
浮雲 (新字新仮名) / 二葉亭四迷(著)
それいかりののしりやまざれば約々せわ/\しく腹立はらたつことおおくして家の内静ならず。悪しき事あらば折々言教いいおしえて誤をなおすべし。少のあやまちこらえいかるべからず、心の内にはあわれみほかには行規を堅くおしえて怠らぬ様に使ふべし。
女大学評論 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)