夕暮ゆうぐれ)” の例文
それからは、一言ひとことも話さなかったような気がします。ふたりは、まもなくその広間を出て行きました。夕暮ゆうぐれ薄明うすあかりが消えせました。
そしてネネムはまちをこめた黄色の夕暮ゆうぐれの中の物干台にフゥフィーボー博士が無事に到着とうちゃくして家の中に入って行くのをたしかに見ました。
汽車は西へ西へと走って、日の夕暮ゆうぐれ十勝とかち国境こっきょう白茅はくぼうの山を石狩いしかりの方へとのぼった。此処の眺望ながめは全国の線路にほとんど無比である。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
私は午後の三、四時までを九州ホテルで休養した上、夕暮ゆうぐれ、上野さんやそのさんと、白雲はくうん池から白雲牧場の方を散歩して見た。
雲仙岳 (新字新仮名) / 菊池幽芳(著)
あたりは見る見る夕暮ゆうぐれの色を帯びて行った。ウイーク・デイのせいか、ときたま若い二人づれが通りかかるほかには、まったく人影がなかった。
女妖:01 前篇 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
それにしても夕暮ゆうぐれの湖の紅鶴べにづるのような、何とさびしい女だろう。それはうたがいもなく、彼の妻だった女である。
木乃伊 (新字新仮名) / 中島敦(著)
四辺あたり夕暮ゆうぐれいろにつつまれた、いかにも森閑しんかんとした、丁度ちょうど山寺やまでらにでもるようなかんじでございます。
毎日、夕暮ゆうぐれになるとあなたからの手紙が廻送かいそうされているような気がして、姉の子をおぶい、散歩に出た浜辺はまべから、いのるような気持で、姉の家に帰って行ったものです。
オリンポスの果実 (新字新仮名) / 田中英光(著)
その下流の右岸には秀麗な角錘形かくすいけいの山(それは夕暮ゆうぐれ富士だとあとで聞いたが)山の頂辺てっぺんに細いたての裂目のある小松色の山が、白い河洲かわすゆる彎曲線わんきょくせんほどよい近景をして
木曾川 (新字新仮名) / 北原白秋(著)
ある日の夕暮ゆうぐれ、京の町を歩いていると
女強盗 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
それをするのは夕暮ゆうぐれが多かった。
花をうめる (新字新仮名) / 新美南吉(著)
私は地獄めぐりを済ませると、夕暮ゆうぐれ間近の景色を観賞するため、ここから十数町をへだつるゴルフ・リンクスへ出かけた。
雲仙岳 (新字新仮名) / 菊池幽芳(著)