塵埃ぢんあい)” の例文
通された二階は全部雨戸が閉ざされて俄に引きあけた一室には明るく射し込んだ夕日と共に落ち溜つた塵埃ぢんあいの香がまざ/\と匂ひ立つた。
竪穴は風雨の作用塵埃ぢんあい堆積たいせきの爲、自然に埋まる事も有るべく、開墾かいこん及び諸種の土木工事の爲、人爲を以てうづむる事も有るべきものなり。
コロボックル風俗考 (旧字旧仮名) / 坪井正五郎(著)
三度目に掛合かけあつた老車夫らうしやふが、やつとの事でおとよの望む賃銀ちんぎん小梅こうめきを承知した。吾妻橋あづまばしは午後の日光と塵埃ぢんあいの中におびたゞしい人出ひとでである。
すみだ川 (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
今迄はこの山王山をめぐる外廓となつて、下町から来る塵埃ぢんあいを防いでゐた、烈しい生存競争から来る呻り声も、此森林の厚壁に突き当つては、手もなくね返されてゐた
亡びゆく森 (新字旧仮名) / 小島烏水(著)
身命しんめいなき下拙わたくしに御座候へば、死する事は塵埃ぢんあいの如く、明日を頼まぬ儀に御座候間、いづれなり死の妙所を得て、天に飛揚致、御國家の災難を除き申度儀と堪兼候處より、相考居候儀に御座候。
遺牘 (旧字旧仮名) / 西郷隆盛(著)
花粉のやうな塵埃ぢんあいの中
太陽の子 (旧字旧仮名) / 福士幸次郎(著)
大言たいげんきしむかしこゝろはづかしさよれがこのんで牛馬ぎうばかはりに油汗あぶらあせながし塵埃ぢんあいなかめぐるものぞ仕樣しやう模樣もやうきはてたればこそはじ外聞ぐわいぶんもなひまぜにからめててたのつまり無念むねん殘念ざんねん饅頭笠まんぢうがさのうちにつゝみてまゐりませうとこゑびくすゝめるこゝろいらぬとばかりもぎだうにひとそれはまだしもなりうるさいは
別れ霜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
塵埃ぢんあいの多い空
太陽の子 (旧字旧仮名) / 福士幸次郎(著)