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地獄谷
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ぢごくだに
百樹曰、
余小千谷にありし時
岩居余に
地獄谷の火を見せんとて、
社友五人を
伴ひ
用意の
酒食を
奚奴二人に
荷しめ
差遣はすべし山中に
地獄谷と云處あり
此所にて兩人を
谷底に
突落して殺し給へ必ず
仕損ずる事あるまじ其
留守には
老僧天一を片付申すべし年は
老たれどもまだ一人や二人の者を
継承した東京市中各処の地名には少しく低い土地には
千仭の幽谷を見るやうに
地獄谷(麹町にあり)
千日谷(四谷鮫ヶ橋に在り)
我善坊ヶ
谷(麻布に在り)なぞいふ名がつけられ
伴ひ山中さして
至る事凡一
里許なり
爰は名に
負地獄谷とて
巖石恰も劔の如きは劔の山に
髣髴たり樹木生茂りて
底も見え分ぬ數千丈の谷は
無間地獄とも云なるべし何心なき二人の
小姓は
師匠の
詞に從がひ爰こそ名に高き地獄谷なり能々
御覽あれと
巖尖に進て差示せば三人は
時分は
百樹曰、
余小千谷にありし時
岩居余に
地獄谷の火を見せんとて、
社友五人を
伴ひ
用意の
酒食を
奚奴二人に
荷しめ