地体じたい)” の例文
地体じたい浮気で男にほれっぽい女とは知らないから、わたしも始めての晩、御用さえ済めば別にはなしのある訳もなし、急いで帰ろうとすると
あぢさゐ (新字新仮名) / 永井荷風(著)
しかし遼東りょうとうの風に吹かれ、奉天の雨に打たれ、沙河しゃかの日にり付けられれば大抵なものは黒くなる。地体じたい黒いものはなお黒くなる。ひげもその通りである。
趣味の遺伝 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
地体じたいこの宅従前住人絶え家賃すこぶる低廉なるは、日本で見た事もない化物屋敷だったのを世話した奴も不届ふとどきだが、佐藤は俺より早く宿ったから知っていそうなものと
するとね、夜目で判然はっきりとは目にらなんだが地体じたい何でも洞穴ほらあながあるとみえる。ひらひらと、こちらからもひらひらと、ものの鳥ほどはあろうという大蝙蝠おおこうもりが目をさえぎった。
高野聖 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
髪の毛は段々と脱落ぬけおち、地体じたいが黒いはだの色は蒼褪あおざめて黄味さえ帯び、顔の腫脹むくみに皮が釣れて耳のうしろ罅裂えみわれ、そこにうじうごめき、あし水腫みずばれ脹上はれあがり、脚絆の合目あわせめからぶよぶよの肉が大きく食出はみだ
お千代は地体じたいたれに対してもそういう女なので、時と場合と相手によって意外な好結果をきたす事もあるが、またがらりと変って
夏すがた (新字新仮名) / 永井荷風(著)
地体じたいが色の白いくせに、白粉おしろいを豊富に塗ったものだからなお目立ちます。往来の人がじろじろ見てゆくのです。
こころ (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
地体じたいなみのものならば、嬢様の手がさわってあの水を振舞ふるまわれて、今まで人間でいようはずがない。
高野聖 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
しかしこればっかりはいくら勧めたって、女の方でも地体じたい自分でやる気がなければ出来るもんじゃアない。まア二人とも同じような人間がうまく一緒になったんだね。
ひかげの花 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
御前はそんな形姿なり地体じたいどこへ、行ったのぞいと聴くと、今芹摘せりつみに行った戻りじゃ、和尚さん少しやろうかと云うて、いきなりわしのたもとどろだらけの芹を押し込んで、ハハハハハ
草枕 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)