嘆声たんせい)” の例文
下から、ほッほッという嘆声たんせいが聞えた。竹見がましらのように身軽にのぼっていったのを、水夫どもが感心しているらしい。
火薬船 (新字新仮名) / 海野十三(著)
考えにつかれた糟谷かすやは、われしらずああ、ああと嘆声たんせいをもらした。下女げじょがおきるなと思ってから、糟谷はわずかに眠った。
老獣医 (新字新仮名) / 伊藤左千夫(著)
と思わず嘆声たんせいを挙げてやや晦冥かいめいになりかけて来た水上三尺の辺をい付きそうな表情で見つめた。
渾沌未分 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
龍太郎りゅうたろうをはじめ、蔦之助つたのすけ小文治こぶんじや、そして竹童ちくどうたちは、忍剣にんけん堪忍かんにんをやぶって力にうったえたのをむりとは思わないが、こまったことになったと、嘆声たんせいをあげていた。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
夫人のマリアは頑迷がんめいで虚栄心が強くて、芸術などには全く理解がなく、夫のハイドンをして「彼女にとって、夫が靴屋であろうと芸術家であろうと同じことだ」と嘆声たんせいもらさしめたが
楽聖物語 (新字新仮名) / 野村胡堂野村あらえびす(著)
ぼくは、「そうかねエ」とにもつかぬ嘆声たんせいを発したが、心はどうしよう、と口惜しく、張りけるばかりでした。が、その運転手は同情どころかい、といった小面憎こづらにくさで、黙りかえっています。
オリンポスの果実 (新字新仮名) / 田中英光(著)
沿道の民衆の間にはさすがにひそやかな嘆声たんせい顰蹙ひんしゅくとが起る。
弟子 (新字新仮名) / 中島敦(著)
私はしばしばこんな嘆声たんせいをもらすのでありました。
湖畔亭事件 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
嘆声たんせいをもらしたものがあった。
苦心の学友 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
そういった嘆声たんせいが、今もいくたびとなく博士の胸のうちにくりかえされているのを、おそらくドン助教授も、また、その他のたれもが知らないであろう。
海底大陸 (新字新仮名) / 海野十三(著)
自分で自分を、時にはまったく、嘆声たんせいのもとに、見捨てかける時すらあった。そして
宮本武蔵:08 円明の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
自分はここまでひと息に考えて来て、われ知らずああと嘆声たんせいをもらした。同時にかさかさとをふんで人の来たのに気づいた。自分は秘密ひみつを人に見られたでもしたようにびっくらした。
落穂 (新字新仮名) / 伊藤左千夫(著)
ああ、と復一はかすか嘆声たんせいをもらした。彼は真佐子よりずっと背が高かった。
金魚撩乱 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
と、大統領の嘆声たんせい。そのとき金博士がそばへ近づいて、ホノルル号からすこし放れた海面において新たにぽかりぽかりと盛り上る大きなあわをさして、何やらいって、ふふふふと笑った。
と、その孝心にひとしく嘆声たんせいをもらし合った。
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「そうだ!」と蔦之助つたのすけ嘆声たんせいをあわせて
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
山ノ井は思わず嘆声たんせいをはなった。
宇宙の迷子 (新字新仮名) / 海野十三(著)
と、古谷局長は嘆声たんせいを発した。
幽霊船の秘密 (新字新仮名) / 海野十三(著)