呼吸苦いきぐる)” の例文
うれしさうにえずたはむれたりえたりして、呼吸苦いきぐるしい所爲せゐか、ゼイ/\ひながら、其口そのくちからはしたれ、またそのおほきななかぢてゐました。
愛ちやんの夢物語 (旧字旧仮名) / ルイス・キャロル(著)
そこにはねだいがあって、髪の黒い、黄いろな顔をした男が、呼吸苦いきぐるしそうにして左枕ひだりまくらに寝ていた。主翁はこれが御病気だと云う伯爵の殿様だなと思った。
黄灯 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
特に我慢のならぬのは、呼吸苦いきぐるしいので、はあはあ耳に響いて、気のけるほど心臓の鼓動がはげしくなった。
沼夫人 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
……そのうちにどうしてだか突然、私には、この食堂の隅々すみずみにまで漂っていそうな、陰惨というほどのものではないけれど、何かしら重苦しい、よどんだ空気が呼吸苦いきぐるしく覚えられだした。
旅の絵 (新字新仮名) / 堀辰雄(著)
ふとしたことから知りあいになった、Uという二十二になるお嬢さんは、彼にとって不思議な存在になった。最初の頃、その顔はまぶしいように彼をおののかせ、一緒にいるのが何か呼吸苦いきぐるしかった。
永遠のみどり (新字新仮名) / 原民喜(著)
そのまゝ押開おしあけると、ふすまいたがなんとなくたてつけに粘氣ねばりけがあるやうにおもつた。此處こゝではかぜすゞしからうと、それたのみうしてつぎたのだが矢張やつぱり蒸暑むしあつい、押覆おつかぶさつたやうで呼吸苦いきぐるしい。
怪談女の輪 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)