吾子あこ)” の例文
「かへし遣る使なければ」(巻十五・三六二七)、「この吾子あこ韓国からくにへ遣るいはへ神たち」(巻十九・四二四〇)等の例がある。
万葉秀歌 (新字新仮名) / 斎藤茂吉(著)
近来は「吾子あこ」と言葉を無暗むやみに使用する人もあるが、あれはまた「可愛いい子よ」と呼び掛ける言葉であつて
註釈与謝野寛全集 (新字旧仮名) / 与謝野晶子(著)
おん母の尼公さまにも、ただ一つのお気がかりとみえ……あわれ吾子あこ崇鑑そうかん(高時の法名)が、今日こんにち、どのような最期をとげるやらと、しきりに、黒煙の空を
私本太平記:08 新田帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
可疎うとましの吾子あこが心やと、涙と共に掻口説かきくどきて、かなしび歎きの余は病にさへ伏したまへりしかば、殿も所為無せんなくて、心苦う思ひつつも、なほ行末をこそ頼めと文の便たより度々たびたびに慰めて
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
吾子あこつれて來べかりしものを春日野に鹿の群れをる見ればくやしき
秋晴れを吾子あことつれたち野みちゆくけふのひとひのゆたけきいのち
閉戸閑詠 (新字旧仮名) / 河上肇(著)
砂なだりもとなくづるれ踏み踏みてのぼらむ吾子あこがひた踏みのぼる
海阪 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
湯に入ると帯解く吾子あこのふところの青きみかんの落ちてころがる
かき・みかん・かに (新字新仮名) / 中島哀浪(著)
かりそめにしかりうべしや吾子あこといへどこの天地のひとりの
並べある木の実に吾子あこの心思ふ
五百句 (新字旧仮名) / 高浜虚子(著)
かへらぬ吾子あこたましひ
花守 (旧字旧仮名) / 横瀬夜雨(著)
秋萩を妻鹿こそ、一子ひとりごに子たりといへ、鹿児かこじもの吾が独子ひとりごの、草枕旅にし行けば、竹珠たかだましじき垂り、斎戸いはひべ木綿ゆふでて、いはひつつ吾が思ふ吾子あこ
万葉秀歌 (新字新仮名) / 斎藤茂吉(著)
ひとりゐてオートミールを煮てたうぶ上海の吾子あこおくりし品はも
閉戸閑詠 (新字旧仮名) / 河上肇(著)
草の香にはずむ吾子あこゆゑはてはなしあはて角力すまひて父はころぶを
風隠集 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
ことし春ははと遊びし八瀬にまた秋のなかばを吾子あこにつれらる
閉戸閑詠 (新字旧仮名) / 河上肇(著)
枇杷の枝に星のれ待つ夕涼をほのかにむる吾子あこが声はも
風隠集 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
小夜ふけて吾子あこが寝顔のかがやくは望月の輪か照り宿るらし
風隠集 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
皆行きぬ吾子あこよいそがむを待つとかの松陰に母の立てるに
海阪 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
子よ吾子あこよ馬はもたずも赤駒の木馬きうまや買はむ大き揺り馬
海阪 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
吾子あこよ、ぞ。
思ひ出:抒情小曲集 (旧字旧仮名) / 北原白秋(著)