ああ)” の例文
ああ、吾が罪! さりとも知らで犯せし一旦の吾が罪! その吾が罪の深さは、あの人ならぬ人さへかくまで憎み、かくまで怨むか。
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
しかるをなお強いて「戯れに」と題せざるべからざるもの、その裏面には実に万斛ばんこく涕涙ているいたたうるを見るなり。ああこの不遇の人、不遇の歌。
曙覧の歌 (新字新仮名) / 正岡子規(著)
それに違いない。ああ。妾のうちはどうしてこんなに悪魔と縁が深いのであろう。何という執念深い悪魔であろう
白髪小僧 (新字新仮名) / 夢野久作杉山萠円(著)
明治四十三年二月三日、粕谷草堂の一家が午餐ごさんの卓について居ると、一通の電報が来た。おけいさんの兄者人あにじゃひとからである。眼を通した主人は思わずああと叫んだ。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
因テホゞ前後ヲ整理シ題シテ『火後憶得詩』トイフ。ああ、古人ハ一タビ経目スルノ書、終身忘レザル者アリ。今余自ラ作ル所ノ者ナホソノ十ノ二、三ヲ記スルコト能ハズ。
下谷叢話 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
ほんに御門の前を通る事はありとも木綿着物に毛繻子けじゆす洋傘かふもりさした時には見す見すお二階のすだれを見ながら、ああお関は何をしてゐる事かと思ひやるばかり行過ゆきすぎてしまひまする
十三夜 (新字旧仮名) / 樋口一葉(著)
俄然がぜん、彼氏のすがった岩角がもろくも砕けてああっと思う間もなく、足を踏みはずしてしまった。続いて彼女が必死の悲鳴を挙げた。彼の胴腹にも同時に強いショックが伝わった。
案内人風景 (新字新仮名) / 百瀬慎太郎黒部溯郎(著)
……子供の時分のおもいでというものは、なぜ、ああ、こうも根強いものか……
浅草風土記 (新字新仮名) / 久保田万太郎(著)
かの infinite longing ですらこれを叙述する時には単にああとか嗟乎ああでは云いつくせないので、不足ながら客観的形相をかりてこれを髣髴ほうふつさせようとするのであります。
創作家の態度 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
ああ! はたして昨日が晴日おてんきであつたかどうかも
暗い天候 (新字旧仮名) / 中原中也(著)
別れる? ああ! 可厭いやだ! 考へても慄然ぞつとする! 切れるの、別れるのなんて事は、那奴あいつが来ない前には夢にだつて見やしなかつたのを
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
この鳥こそは今申し上げた、人の声を盗む悪魔で御座りまするぞ。悪魔が王様の御声を盗みに来ているので御座りまするぞ。ああ。恐ろしい、恐ろしい。御免下されませ。
白髪小僧 (新字新仮名) / 夢野久作杉山萠円(著)
然レドモ九皐詩文ヲ以テ高ク自ラ矜持きょうじシ世ニルコトヲ欲セズ。今四十ヲ過ギテナホ坎壈かんらんヲ抱ク。コレラノ作アル所以ゆえんナリ。方今在位ノ人真才ヲ荒烟寂寞こうえんじゃくまくノ郷ニ取ラズ。ああ惜ムベキかな
下谷叢話 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
さのみ珍らしいとは思ひませぬけれど出際でぎはに召物のそろへかたが悪いとて如何いかほど詫びても聞入れがなく、其品それをば脱いでたたきつけて、御自身洋服にめしかへて、ああ、私ぐらゐ不仕合の人間はあるまい
十三夜 (新字旧仮名) / 樋口一葉(著)
ああ! 案山子かかしはないか——あるまい
山羊の歌 (新字旧仮名) / 中原中也(著)
ああいた、咲いた」
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
さもあらば、必ず思知る時有らんと言ひしその人の、いかで争で吾が罪をゆるすべき。ああ、吾が罪はつひゆるされず、吾が恋人は終に再び見る能はざるか。
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
そうして悪魔の『瞬』……七ツの果物は悪魔のすうであった。……私は七ツのすうに咀われた。悪魔の美紅に欺された。悪魔の『瞬』に踏みにじられた。ああ恐ろしい。……嗚呼ああ苦しい。
白髪小僧 (新字新仮名) / 夢野久作杉山萠円(著)
ああ彼女は死んだのか。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)