双肩そうけん)” の例文
たとえば仁義じんぎのために死するとか、国家の責任を双肩そうけんになって立つとか、邦家ほうかのためには一身をかえりみず、知遇ちぐうのためにはいのちおとすとか
自警録 (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)
いわば一党の人の然諾ぜんだくと咲耶子の運命うんめいとは二つながら、かかって自分の双肩そうけんにあるのだ。敗れてなるものか、おくれてなるものか。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
その時かれは「なんじ、幼き第二の国民よ、国家の将来はかかってなんじらの双肩そうけんにあるのである。健在なれ、汝ら幼き第二の国民よ」
田舎教師 (新字新仮名) / 田山花袋(著)
実はその責任の一半は、この窯を広く世に紹介した私の双肩そうけんにかかるので、考えあぐんでいる次第である。
小鹿田窯への懸念 (新字新仮名) / 柳宗悦(著)
貧窮ひんきゅう病弱びょうじゃく菲才ひさい双肩そうけんを圧し来って、ややもすれば我れをしてしりえに瞠若どうじゃくたらしめんとすといえども、我れあえて心裡の牙兵を叱咤しったして死戦することを恐れじ。
星座 (新字新仮名) / 有島武郎(著)
いたずらなる狼狽ろうばいは、国難をして遂に収拾しゅうしゅうすべからざる状態に導くものである。皇国こうこく興廃こうはいは諸君の双肩そうけんかかれり、それ奮闘努力せよ。右布告す。昭和十×年五月十日。
空襲葬送曲 (新字新仮名) / 海野十三(著)
阿部に継げる堀田正篤まさひろの如きは、その外交的智識よりすれば、当時において一省の長官たるにおいて余りあり。しかれども双肩そうけん以て内憂外患を担う乱世の宰相たるうつわにあらず。
吉田松陰 (新字新仮名) / 徳富蘇峰(著)
人々のこうべは、一斉にそのほうへ振向いた。見ればその人は、貌相ぼうそう魁偉かいい胸ひろく双肩そうけん威風をたたえ、武芸抜群の勇将とは見られた。
三国志:02 桃園の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)