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双六巌
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すごろくいは
非情のものが、
恋をした
咎を
受けて、
其の
時から、
唯一人で、
今までも
双六巌の
番をして、
雨露に
打たれても、……
貴下の
事が
忘れられぬ。
而して
誰も
居ない
八畳の
真中に、
其の
双六巌に
似たと
言ふ
紫縞の
座蒲団が
二枚、
対坐に
据えて
有つたのを
一目見ると、
天窓から
水を
浴びたやうに
慄然とした。
合せ
鏡して
見るやうな……
大さは
然れば、
畳三畳ばかりと
見ゆる、……
音に
聞く、
飛騨国吉城郡神宝の
山奥にありと
言ふ、
双六谷の
名に
負へる
双六巌は
是ならむ。