十勝とかち)” の例文
來月一日から、また、今度は通常道會が招集されるので、十勝とかちから出て來るあの議員を捉へて、いよ/\泣きついて見ようかとも思うてを
泡鳴五部作:05 憑き物 (旧字旧仮名) / 岩野泡鳴(著)
汽車は西へ西へと走って、日の夕暮ゆうぐれ十勝とかち国境こっきょう白茅はくぼうの山を石狩いしかりの方へとのぼった。此処の眺望ながめは全国の線路にほとんど無比である。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
私はある時、一人の行商人たびあきんどから、こういう話を聞きました。その行商人は、十勝とかちの高原のあるところで、夕方、道にき暮れてしまいました。
(新字新仮名) / 久米正雄(著)
昔、十勝とかち方面から夜盗の一団が上川かみかわアイヌの部落を襲うべく、山を越えて石狩川の上流にいかだを浮べて流れを下って来た。
えぞおばけ列伝 (新字新仮名) / 作者不詳(著)
硫黄いおう岳を窮め、十勝とかち岳を窮めて、北海道の中央に連亙せる高山には足跡到らぬ隈もなし。
層雲峡より大雪山へ (新字新仮名) / 大町桂月(著)
漁師のせがれを一季二万円で十勝とかちの農家に出稼ぎさせるような昨今の状況だという。
少しでも安い馬を買ひたいと、自分から馬産地の十勝とかち方面などに出向いたものもあるさうだが、却つて高くついて了つたといふ。願はしいのはお上が何等かの方策を樹ててくれることだ。
東旭川村にて (旧字旧仮名) / 島木健作(著)
金高が少しかさむので、勧業が融通をつけるかどうかと思っているんですがね……もっともこのほかにもあの人の財産は偉いもので、十勝とかちの方の牧場には、あれで牛馬あわせて五十頭からいるし
星座 (新字新仮名) / 有島武郎(著)
(第一回參照)此事は今の十勝とかちの地に於てこりし事なりと云ふ。
コロボックル風俗考 (旧字旧仮名) / 坪井正五郎(著)
帯は十勝とかちにそのまま根室ねむろ、落つる涙の幌泉ほろいずみ
フレップ・トリップ (新字新仮名) / 北原白秋(著)
十勝とかち荒野あらの住家すみかさだめん
命の鍛錬 (旧字旧仮名) / 関寛(著)
十勝とかちにをつた頃から、いつもの樣ですから、慣れてしまつて、何ともありません」と、かのぢよは答へる。
泡鳴五部作:03 放浪 (旧字旧仮名) / 岩野泡鳴(著)
此辺は秋已に深く、万樹ばんじゅしもけみし、狐色になった樹々きぎの間に、イタヤかえでは火の如く、北海道の銀杏なる桂は黄のほのおを上げて居る。旭川から五時間余走って、汽車は狩勝かりかつ駅に来た。石狩いしかり十勝とかちさかいである。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
帯も……十勝とかち……に…………
フレップ・トリップ (新字新仮名) / 北原白秋(著)
遠藤は臨時道會が召集される爲め一旦歸札きさつする必要が出來たので、長濱技手は勿論、義雄も共に歸路につかなければならないのだが、ここから歸るのも、十勝とかちへまはつて帶廣停車場へ出るのも
泡鳴五部作:04 断橋 (旧字旧仮名) / 岩野泡鳴(著)