勾引かどわか)” の例文
あるいは継母に苦しめられる娘か。「勾引かどわかされた女で、女郎にでもなれと責められるのか。こりゃ、もしよくあるやつでございますぜ。 ...
活人形 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
小僧「だからあれはいけないと云うので、危険けんのんな奴ですよ、強請言ねだりごとばかり云ってましたから、お嬢さんが勾引かどわかされるといけませんぜ」
つれ信州しんしう湯治たうぢに參りしが右妻儀は五歳の時人に勾引かどわかされ江戸へまゐりしにはだの守りぶくろに生國は越後高田領のよし書付かきつけ有しゆゑおや對面たいめん致させんとて來りし所途中とちうにて妻を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
眼からはぽろ/\涙は流れ出すのだけれども、感銘は一向ぼやけています。この四ヵ月近くの月日は、これ程までにわたくしを、少女の世界から大人の世界の女に勾引かどわかし去ったのでしょうか。
生々流転 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
英雄や、悪魔までが、今勾引かどわかすかと思えば、また騙して
小「長持の中で婦人の泣声がいたすようだが、あんな悪い奴らだから、事に寄ったら女でも勾引かどわかして担いで来たかも知れんぜ」
わしは通りがゝりのものだが何も心配せんでも宜しい、礼はあとでも宜しい……ナニ勾引かどわかされたと……成程こういう娘を勾引すような奴だもの
あなたの娘は勾引かどわかされても、死んだか生きているか知んねえのだから、それよりもわしうちけえって多助と両人ふたりで娘の行方を捜し、私も亦捜してやるから
塩原多助一代記 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
その傍の柱の所に年の頃十六七になります器量のい娘が縛られておりました、あゝ荒々しいなさけない事をする、何処から勾引かどわかして来たか憫然かわいそうにと存じまして
と悪者三人相談して、勾引かどわかしたおえいを脊負おぶいまして、此処を逐電致しましたが、悪事というものはのがれ難いもので、再び追手に掛りますというお話になります。
塩原多助一代記 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
文「それは御親切な事で、併し今も亭主から聞きましたが、大分此辺こゝら盗人ぬすびとが居って、婦人などを勾引かどわかすとか申しますが、全く左様な事があるのでございましょうか」
後の業平文治 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
婆「何処へでも往ってそう云え、こっちで名主へ出るのだ、ぐず/\すると勾引かどわかしの罪に落すぞ」
塩原多助一代記 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
乙「どうも此の辺は物騒な処で、冬向ふゆむき女連おんなづれや一人旅では歩けませぬ、折々勾引かどわかしや追剥が出ます」
後の業平文治 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
三年あとに信州の鳥居峠へ掛る時、悪者に出逢い、勾引かどわかされんとする時に、一とうを抜いて切結んだが、向うは二人此方こちらは一人、其の時受けた疵が斯のように只今でも残っている
敵討札所の霊験 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
旅「あゝ左様かね、その女あ泥坊に勾引かどわかされて新潟へ売られてしまいましたよ」
後の業平文治 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)