効々かいがい)” の例文
帰る時は、効々かいがいしくざっと干したのを端折はしょって着ていて、男に傘を持たせておいて、止せと云うに、小雨の中をちょこちょこ走りに自分でくるまを雇って乗せた。
第二菎蒻本 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
そういって割箸の新しいのなどには欠かさなかったお前の効々かいがいしい勝手の間の働き振りなどを、私はふと思い起してしばらくうっとりと鼠入らずの前に立ち尽して考え込んでいた。すると
うつり香 (新字新仮名) / 近松秋江(著)
が、そんな心安だてより、鮒の見事だったのより、ちょっと話したいのは三傘夫人の効々かいがいしさで。……まないたの上に目の下およそ一尺の鮮鱗せんりん、ばちばち飜るのに、たすきも掛けない。
卵塔場の天女 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
飯のつけようも効々かいがいしい女房にょうぼうぶり、しかも何となく奥床おくゆかしい、上品な、高家こうけの風がある。
高野聖 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
火事の最中、雑所先生、はかま股立ももだちを、高く取ったは効々かいがいしいが、羽織も着ず……布子の片袖引断ひっちぎれたなりで、足袋跣足たびはだしで、据眼すえまなこおもてあいのごとく、火と烟の走る大道を、蹌踉ひょろひょろ歩行あるいていた。
朱日記 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
女房はしきりに心急こころせいて、納戸に並んだ台所口に片膝つきつつ、飯櫃めしびつを引寄せて、及腰およびごし手桶ておけから水を結び、効々かいがいしゅう、嬰児ちのみかいなに抱いたまま、手許もうわの空で覚束おぼつかなく、三ツばかり握飯にぎりめし
海異記 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
その効々かいがいしい、きりりとして裾短すそみじかに、繻子しゅすの帯を引結んで、低下駄ひくげた穿いた、商売あきないものの銀流を一包にして桐油合羽とうゆがっぱを小さく畳んで掛けて、浅葱あさぎきれ胴中どうなかを結えた風呂敷包を手に提げて
黒百合 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
と尋ねたのは効々かいがいしい猟装束かりしょうぞく
二世の契 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)