前以まえもっ)” の例文
中世の記録を見ればいくらでも実例が出ているが、京都から奈良へというほどの一日の旅でも、前以まえもって通知があって、昼の用意をする者がある。
母の手毬歌 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
主人をはじめ宿の人達の陳述にも、別段新しい事実はなく、皆私達が前以まえもって聞いていた所と同じことでありました。
湖畔亭事件 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
さあ、何ともいえないが、とにかく穏かならぬ雲行くもゆきだ。それにこれからは、昔の戦争のように、前以まえもっいくさを始めますぞという宣戦布告なんかありゃしないよ。
空襲警報 (新字新仮名) / 海野十三(著)
調度類ちょうどるい前以まえもっ先方せんぽうおくとどけていて、あとから駕籠かごにのせられて、おおきな行列ぎょうれつつくってんだまでのはなしで……しきはもちろん夜分やぶんげたのでございます。
これらは前以まえもって承知あらん事を乞ふ。話の種は雅俗を問はず何にても話されたし。学術と実際とにかかはらず各種専門上の談話など最も聴きたしと思ふ所なり。
病牀六尺 (新字旧仮名) / 正岡子規(著)
何うも私は武骨者で困ります、段々とお世話様に相成り何共なにともお礼の申し上げようが有りません、先達せんだっては又出来もせんものに、前以まえもってお給金を頂戴致し、中々今からお手間などを
政談月の鏡 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
私は兎に角前以まえもって申上げたように欧洲第一次大戦の起らない以前に西洋の世の中を見て来た老人です。今日世界の気運の那辺に向いつつあるかはもう私には分らなくなっています。
亜米利加の思出 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
あんなに生きていたがるものに、何も前以まえもって知らせるには及ばない。もし余計な事を知らせたら、己をこわがり出すだろう。そうなると己一人で死ななくてはならない。それは如何いかにもつらいのだ。
みれん (新字新仮名) / アルツール・シュニッツレル(著)
あいつが前以まえもって、葬儀社の運転手に住み込んでいなきゃ、この芸当は出来ませんや。
恐怖王 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
この対面たいめんにつきては前以まえもっ指導役しどうやくのおじいさんからちょっと前触さきぶれがありました。
私たちはその事を予想して前以まえもって深く嘆息したのである。
あの仕掛を僕は前以まえもって知っていたのです。
湖畔亭事件 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)