初春はつはる)” の例文
精物というは、清らかなるものという意、堂上方が、初春はつはるの慶賀に御下向なさるに、何で精進料理ということがありましょうや。
元禄十三年 (新字新仮名) / 林不忘(著)
初春はつはる早々、あちらの役者の間へお移りができまする。ここは暗うござるが、あちらの御座敷なれば、庭も見え、空も見え、幾分かお気が晴れましょう』
新編忠臣蔵 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
いはば家族的な、私塾のやうなもので先生も兒童ものんきでしたから、初春はつはるに、學校と、自分のうちへと張り飾る大字を、席書きといつて年末に書くのでした。
吾が愛誦句 (旧字旧仮名) / 長谷川時雨(著)
お嬢さんや娘さんらしい人たちの立交っているのはあまり見かけませんから、門松を背景とした初春はつはるちまたに活動する人物としては、その色彩がすこぶる貧しいようです。
二階から (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
あらたしきとしはじめの初春はつはる今日けふゆきのいや吉事よごと 〔巻二十・四五一六〕 大伴家持
万葉秀歌 (新字新仮名) / 斎藤茂吉(著)
初春はつはる長閑のどかな空気を無遠慮に震動させて、枝を鳴らさぬ君が御代みよおおい俗了ぞくりょうしてしまう。
吾輩は猫である (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
で、チベット暦の一月一日からこのモンラムの始まるまでは、いわゆる初春はつはるの祝いである。この祝いは遣り方は少しく違って居りますけれども、やはり元日を祝するというに至っては同一です。
チベット旅行記 (新字新仮名) / 河口慧海(著)
初春はつはることだ。おばけでもあるまい。
春着 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
初春はつはる
晶子詩篇全集 (新字旧仮名) / 与謝野晶子(著)
初春はつはる初子はつね今日けふ玉箒たまばはきるからにゆらぐたま 〔巻二十・四四九三〕 大伴家持
万葉秀歌 (新字新仮名) / 斎藤茂吉(著)
おん大将をはじめ軍師ぐんし民部みんぶも、咲耶子さくやこも、みな一のごとく団欒だんらんして、この冬をこし、初春はつはるをむかえたのであるが、ただひとり、人気者の竹童がいないのは、なにかにつけて
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
わたしも取る年に候えば初春はつはる御雑煮おぞうにを祝い候も今度限りかと……何だか心細い事が書いてあるんで、なおのこと気がくさくさしてしまって早く東風とうふうが来れば好いと思ったが、先生どうしても来ない。
吾輩は猫である (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
奥座敷の客が呼びこんだのであろう、初春はつはるらしい太神楽だいかぐらのお囃子はやしが鳴りだした。
鳴門秘帖:02 江戸の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)